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六天ニ散リユク花
六天花
「あ……紅耀ッ!?」
 自分がはじめに出会う相手は、梅鈴だと、半ば確信を抱いていたにも関わらず、それがあっさりと覆されて、清花は、幼い顔をめいっぱい使って、驚きを示した。
「紅耀!」
 よろめくように駆け寄って、少年の体にきつく抱きつく。その声に、態度に、紅耀も、驚いて、妹を見た。
 反射的に紅耀は清花をふりほどこうとし、予想外に大きくよろめいた彼女を、片腕だけで抱きとめる。
「危ない……!」
 くたりと力なく寄りかかってくる小さな体を、なんとか立ち直らせて。
「無理をするな……清花」
 盛大な溜め息と共に、吐き出された言葉に、清花の目が、さっきよりももっと大きく見開いた。
 泣くか、と、紅耀は身構える。
 が、清花の反応は、紅耀の状況判断を大きく裏切ったものだった。
「紅耀! 今、なんて? ねえ!」
 大きくした目をキラキラと輝かせ、詰め寄るように聞いてくる。
「無理をするな……と言ったんだが」
 意味が分からず、繰り返す紅耀に、清花は頬を膨らませる。
「ちっがーう! その後!」
「…………?」
「清花って! 呼んだ? 呼んだよね、今!」
「……それが、どうかしたのか」 うんざりと、紅耀は、前髪をかきあげる仕草をしてみせた。
 正直なところ、彼は、清花のことがあまり得意ではない。というか、その子供じみた騒々しさが苦手なのである。
 清花のほうは、なぜか、そんな紅耀になついているのだが。
「そんなことより、……いくぞ」
 面倒な話を強制的に打ち切って、紅耀は再び歩き出す。
「うん、そうだね」
 清花も、まじめな顔で、その背を追った。

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