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半熟騎士の日記帳
第一章 建国記念祭
「始まるぞ」
「始まるぞ」
「急げ」
「急げ、中央広場だ」
 それまで熱中していた見世物に名残惜しげにしながらも、傍らを他の子供たちが駆け抜けていくと、じっとしてなどいられないらしい。
 わらわらと人垣が崩れていく合間を縫って、誰よりあわただしく飛び出していくのは、ルイサスと剣を交わせていた、騎士服の少年である。
「アッシュ。何やってるんだ? こんなところで……」
 すれ違った黒髪の少年から声を掛けられ、少年は、走る速度は落とさず、大声で怒鳴る。
「今から結団式だなんて、すっかり忘れてたんだよっ!」
 黒髪の少年が、その後ろで肩をすくめてため息をつく気配が、伝わってきた。

 そんな中。
「おい、マルゥ! 俺たちも、早く行こうぜ。でなきゃ、いい席がなくなっちまうよ!」
「リック。それはもちろんわかってるけど、ローザが……」
 中央広場から少し離れた位置に店を出している、雪分草の甘菓子を売る屋台では、ウィムレシア第二初等学校の生徒たちが、そわそわと腰を浮かせていた。

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あきゅろす。
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