おもいびと ◆渇望19 陸が眠りについた独りの時間。 おれは、その行為を思い出して堪らなくなる。 疼く身体は収まりがつかなくて。 おれは、欲に負けて深夜に女を呼び出した。 満更でもない顔でおれを迎える女は、一様に「どうしたの?」と理由を訊く。 理由なんて言える訳もなくて、おれはただ情欲をぶつけて果てた。 なかにはひとりだけ聡い女がいて。 ソイツだけが核心を突いてきた。 「──恋でもしたの?」 クスクスと笑う女を見つめて。 おれは、救いようのないおれ自身の在り方に気付いて茫然とした。 そうだ。 おれは女を抱きながら。 陸を想って。 陸の中で果てていた。 最低だ 渇望 ――終―― [*前へ] [戻る] |