おもいびと ◇渇望2 何も言い返せない。 本当の事だから。 その本当の事を海斗は知っていたんだ。 どうして隠しきれなかったんだろう 「なんで………しないの?」 海斗は困ったようにおれに訊ねる。 「ちゃんと出来てたじゃん」 「忙……しくて」 理由をこじつけるおれの嘘は、頭のいい海斗には見抜かれてしまった。 「気持ちいいの……嫌い?」 海斗は、困ったような。 悲しそうな。 優しい声で、おれの真実に迫ってきた。 「あんなに……良さそうだったのに」 海斗に指摘されて、おれの足が震えた。 浅ましい自分を知られていた 厭らしい自分を知られていた おれはショックで。 一言も返せなくなった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |