おもいびと ◇穢れなきもの6 おれは、せっかくだから音楽を続けようと思って、吹奏楽部に入部した。 音楽は楽しくて、アンサンブルを作って合わせる音の気持ちよさには、しばしば陶酔させられる。 美しい音。 肌と耳に心地よい振動。 でも。 そんな事を感じる度に。 おれは。 海斗の声と。 海斗の指を思い出して。 疼く身体に自己嫌悪を覚えて悩まされる。 自分に触れたくなくて。 忘れようとしても、朝になると現実に打ちのめされて。 こんな身体なんかいらない。 せっかく海斗に教えてもらったのに。 おれは。 自分に触れる事すら出来なくなってしまった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |