おもいびと ◇蓮の棘14 「やめろ……陸」 顔を背けて、海斗は苦しそうに訴える。 そんな弱々しい抵抗なんてされても、よけい誘ってるくらいにしか思えない。 おれは、一度離れた唇を、またキスで捕らえて絡み付いた。 おれの勢いに負けた海斗は、ジリジリと後退りながら、不意に足許をとられて身体を沈ませた。 そこには、さっきまで海斗が座っていたソファーがあって。 おれはそのまま海斗を押し付けて、上から覆い被さるようにキスを落とした。 頑なに閉じた歯列を割って、無理矢理舌をねじ込むと、海斗は諦めたようにおれを受け入れた。 途端に形勢が逆転する。 海斗は触発されたように喰い付いて。 おれをソファーに組み伏せて、熱いキスをくれた。 海斗 海斗 嬉しい 海斗 おれは夢中で海斗の背中を抱きしめて。 熱のこもった身体を寄せた。 蓮の棘 ――終―― [*前へ] [戻る] |