おもいびと ◇蓮の棘12 「抱いて……海斗」 吐息が触れるほどに、こんな近くで。 海斗の喉が、緊張を飲み下して上下するのが見えた。 まるで、おれに捕食されるかのような、弱い在り方を見せる海斗はらしくない。 緊張しているのはおれの方だっていうのに。 恥ずかしくて、かっこ悪いって分かってる。 だけど、おれはもう限界だ。 海斗が欲しくてたまらない。 海斗の心も体も、全てがおれだけのものであるように縛りたい。 海斗がおれを忘れないように。 せめて、身体でつなぎとめたいと思うのも。 愚かな事なんだって分かってる。 ベタな在り方で笑っちゃうよ。 だけど。 それでもおれは、海斗の全てが欲しかったんだ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |