おもいびと ◇蓮の棘7 「──シャワー借りていい?」 おれの言葉は唐突に聞こえたに違いない。 海斗は、疑問符だらけの表情をおれに向けた。 「身体……冷えたから。暖まりたい」 理由を伝えると、海斗は途端に甲斐甲斐しくおれの世話を焼いてくれた。 案内されたバスルームは、広くて清潔な匂いがして。 この家は、きっと海斗が管理しているんだ。 おれはそう感じた。 バスルームから出ると、バスタオルと着替えが置いてあった。 着替えを見て、おれはまた泣いてしまった。 ここにいていいの? 少しでも海斗の傍にいていいの? 涙がなかなか止まらなくて。 せっかく暖まったおれの身体は、また冷えてしまった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |