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ロイアイ 既成事実なら


「大佐、失礼します」

彼女はすぐに彼の異変に気が付いた、
二日酔いだ。

彼女は最初昨日の夜も、大層遊んだのだろうなと思った。
が顔色が楽しい思い出を作った様な、二日酔いの顔では無かった。

水を用意する必要があったが、既に用意していていた。
彼女はコーヒーを出す時に、必ず水も出す事にしている


「モーニングコーヒーです」

彼が早く来る時、彼女は早めに出勤する。
二人の早めはいつもより、20分ほど早いぐらいの事だった。
早めの時は、電話をワンコールするのが彼のやり方だった。
しかも決まった時間だ。


「何も聞かないのか?」

「察しは付きます、振られたんですか?」

「ふっ、その通りだ」
何時もは笑い飛ばす彼だったが、今度ばかりはかなり本気だったらしい。

「口説いたつもりだったがな。他に男が出来てな。
被害妄想女だったよ、私は誰かじゃないのよ、
私を見てくれないくせになどと言って……」


グイーっとコーヒーを飲むと、はぁとため息をついてデスクにぐったりと伏せった。


「大佐」
そんなデスクに。ドサッと服が置かれた。
彼が目をやると、彼女の上着だということが分かった。


「……、中尉」
生唾を飲み込む光景が、目の前に浮かんでいた。
中尉がシャツのボタンに手をかけて、もう腹が見えるくらいに前がはだけていた。
彼は立ち上がり、上着を彼女の肩にかけるとギュッと引き寄せて彼女の肌を隠した。
「君は、そんな事しなくていい」
「……、チャンスだと思ったんです」
彼女は服を整えだした。
「チャンス……」
「ここで、既成事実を作ればあなたと付き合えるかと思って」
「えっ……」
「でももういいです、こんなバカな事二度としませんから」
彼女は優しく彼の手に触れると、出て行った。

はぁ、彼は深くため息をついた・
昨日、今日に続いてダブルパンチだった。
女には何時も裏切られる。
好きだからこそ大切にして来たのに、彼女はその気持ちをくんではくれない。
コーヒーを飲み干すと、ドアをノックする音が聞こえた。


「入れ、……何だハボック」


「この書類に目を通して置いて下さい。それからこれヒューズ中佐からです」
「分かった、他には??」

「大佐、……押し倒せば良かったのに、中尉は気持ちを伝えましたよ。あとは大佐次第じゃないですか?」

「……、話は終わりか??」

「失礼します」

部屋が静かになると、ロイは二日酔いで痛い頭を抱えているのにも関わらず、また酒を飲みたくなった。
きつい酒を。

一日が終わって、彼女は夕食の材料の買出しを
仕事帰りに市場に寄るのが日課だった。
夜勤の時は加工もので済ますが毎日、外食では身ももたない。

誰かが部屋で待っている訳でもないが、
彼女は料理を作ることだけは、怠らない。


『ブラックハヤテ号の、餌も買わなきゃ』



今日はスパゲッティである。
サラダと旬の果物を添えるのが、彼女の食卓である。



ドンドン

と荒っぽいノックが部屋に響き渡ったのは、彼女が丁度風呂から上がって、涼んでいる時間帯だった。誰だ、非常識なと思いつつ。銃を片手に、ドアに近付いて行く。
ブラックハヤテは後ろに待機している。
彼女の今日の寝巻きスタイルは、髪は下ろして、ノースリーブの丈の短い、薄手のワンピースだった。
普段では考えられないような、楽な格好だった。

何か羽織った方がいいかしらと思った時、また
ドンドンとノック。

ドアを開けるとその人物は、なだれ込むように入って来た。どうやらもう一度ドアを叩こうとしたらしい

おっとととなりながら体勢を保つと、その人物の赤い顔が目の前に現れた。



「大佐」
彼女は持っていた銃を靴箱の上に置くと、彼を招き入れてドアを閉めた。



「中尉」
のたのたと、彼女の部屋に入り椅子に座ると、
ゴンっと頭をテーブルにぶつけて伏せった。

銃をもとの場所に戻し、彼女は冷たい水をテーブルに置いて、彼の肩を揺すった。
「大佐」
「んっ??」
「水を飲んで下さい」
「ああっありがとう」

ロイはイッキに飲み干すと、彼女にからのコップを返した。

「どれぐらい飲まれたんですか??ふらふらになって、何か起こったとき対処できませんよ。それに、そんな状態で町をうろうろされては変な噂が立ちます、お酒はしばらく謹んで下さい……、大佐。聞いて……」

彼の彼女を見る目が、ドンドンと変わって行くのが分かった。
目のバッチと開けて、まるでさっきまで飲みすぎていたとは思えないほど、生き生きとなりだした。

彼女は、それをみて水がきいて来たんだわと思った。

そして彼にベットで寝る様に勧めた。
「いいのか??君はどこで寝る」
「使っていない、ソファがあるのでそこで」
「分かった……」

ベッドまで行くと、白い清潔そうなベッドがあった。

「シーツは変えてありますから」
そう言って、かけ布団をめくり彼を促した。

彼が布団に入ると、優しく布団をかけてお休みなさいと言った。
それなのに、手首を掴まれていつの間にか彼の胸に顔を埋めていた。

「大佐」
「今朝はすまない……、そのびっくりしてしまって」
耳元で聞こえる彼の声は、くすぐったい。

彼女は真剣に、その言葉に耳を傾けられなかった。
だってこんなにも、ドキドキしているのだから今朝自分であんな大胆なことをして置きながら、今、こんなにもドキドキしている。

短いワンピースの中に、彼の手が入って来た。
いつの間に押し倒されたのか……すっかり彼にとらわれていた。
「んっ……」
「驚いたよ、君はこんなに薄着で寝てるんだね」
乳首に触れられるとそこは、赤い突起で、彼の舌を嬉しそうに歓迎した。ワンピースを脱がされると、
もう、パンツだけだった。

下の方に彼の手が伸びた時、リザは、思いっきり
肘を彼の腹に入れた。

「中尉……」
苦しそうにしているうちに彼の下から抜け出て
もう一度、ワンピースを着る。

「大佐、シラフの時にもう一度誘って下さい。
お休みなさい」



次の日の朝
ぐったりした様子で彼が起きて来ると、リザは出勤スタイルになっていた。
「……、君は今日はそうだったか」
「大佐、おはようございます。モーニングコーヒーです。大佐は今日は非番です。これ合鍵です。渡して置きますから、カギ閉めて帰って下さいね」

と、コーヒーと鍵を渡される。
「えっ、ちょっと待ちたまえ」
「行って来ます」


リザのいなくなった彼女の部屋で、ロイは合鍵の意味をしばし考えた。



つづく






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