他ジャンル ロイXアイ 珈琲の苦い味 「どうしたの?」 「中尉、それが……」 「大佐??」 いつもは皆より遅いのに、昨日からいたんだ。 昨日の夜のヒューズの葬儀の後、戻って来てそのまま。目が腫れぼったくなっているのが分かった。 人知れず泣いた証拠だった。そんな人を起こすのも憚り、皆どうしたものかとなっていた訳だ。 「寝かせて置きましょ。皆部屋から出て、今日の所は大佐の仕事出来る事は、分担して進めて置きましょう」 皆を部屋から出して、椅子に座ったまま寝ているロイの顔を見てから、肩から毛布をかけやる。 夕方、部屋に入ると、大佐は窓の外を眺めていた。 「中尉、皆は?」 「時間通り、帰りました。大佐、今日は私が送って行きましょう」 「ここにいたいんだ。家に帰ると、要らぬ事を考えてしまう様な気がしてね。帰れば独りだからね」 「では、私の家に、今日は泊まって下さい。ブラックハヤテ号もいますし、……それなら一人じゃないでしょ?」 「だが……」 「大佐、事務所にも光熱費があるんですよ」 「分かった、世話になる」 ロイは、まだ拭えない悲しみの顔をだった。 そんな彼を見るのは辛かった。 自分だって悲しい、でもいつまでも落ち込んでられちゃ付いて来た意味がない。 一日も早く立ち直ってくれないと、リザはそう思っていた。 でも家に招いた所で、自分に出来る事はあるのだろうか? 夕方の町中を、私服の二人は並んで歩いた。 ロイは。ただ下を向いていた。 リザの腕の中には、先ほど寄り道して買った料理の材料がある。 とにかく何か口にしないと、元気にならないだろうそう思った。 「シャワーで汗流して下さい。その間に、夕食の用意をするので」 夕食を済ませて、自分はソファーで寝るからベットを使ってくれとロイに伝えると、リザはシャワーを浴びた。 シャワーからあがると、リビングには思いもかけない光景があった。 「……大佐」 リザの家には、友人が無理矢理置いて行った、酷くきつい酒があった。リザがたまにたしなむ時は、水割りだ。それをグイグイいっていたみたいだ。 「大佐、飲みすぎです」 ロイの手から、グラスを取り上げ様とした手首を掴まれてリザは動揺した。 ロイは今、酔っていてしかも弱っている。 リザは、いつも通りの格好をしてしまっている。 動き安いパンツに、勿論ノーブラにタンクトップ。 気づいた時には、遅いというものだろうか、ロイの唇が、リザの手首に触れていた。 「大佐!」 思わず抵抗。手を引いて、グラスと酒を取り上げた。 「いいですか。今日はゆっくりベットで寝て下さい。昨日はずっと、椅子だったでしょう?」 酒を棚に戻し、グラスを軽くすすいだ。 手に酒の匂いが染み付いた。 ドッと、背中に重みと温もりを感じた。 「リザ……」 ドキっと心臓が波打って、もう逃れられないと体は言っていた 『何で、拒まないの』 腰に回った大きな手、体温をジワジワと背中に感じた。 「良かった、今度は拒まないね、おいで」 グッと手首を引かれて連れて来られたのは、ベットだった。 『えっ!?』 流れる様に押し倒された。 ロイの瞳は、リザから離れなかった。 「大佐……」 次の瞬間、ロイはリザの谷間に沈んだ…… 吐息の中には安らぎがあった。 この状態をどうしようかと思ったが、起こす訳にも行かない。 身をヨジって、二人の体を掛け布団で包んだ。 そして、そのまま朝を待つ事にした。 いつの間にか寝てしまっていた。 朝になるとロイの姿は無かったテーブルに置き手紙がある。 「先に行っている、気を付けて来たまえ」 文面は上司だった。 髪をとかしブラックハヤテ号にエサをやり、朝食を軽く済まして出勤。 ハボック達に挨拶して、大佐の部屋をノックすると澄ました返事が帰って来る。 「失礼します」 目をやると、行為に目をそらされた感じがした。 が、気にせずいれたての珈琲を机に置いた。 その後、今日の仕事内容の説明に入った。 「今日は量が多いですよ。昨日の分もありますので、こちらで目を通して置きましたので、大佐は確認と訂正をお願いします」 「中尉」 「昨日、私は何か君にしたかな?起きたら酷い頭痛 がして、君の上になっていたものだから……酒の勢いで」 「ご心配なく。勢いがあり過ぎて、大佐は寝てしまいました。何も無かったと言えば嘘になりますが、酔った勢いでそう言った関係に、ならなくて良かったと思っています」 「私は君に何か?」 「手首にキスを、それから後ろから抱きつかれて名前を呼ばれてベットに押し倒されました。でも、ここで暗転。私も軽率だったと思います。上司である大佐を部屋に入れた事」 「……リザ、私は」 「今は勤務中です、中尉と」 「中尉、私がしたことで気分を害したのなら謝る。 だが君を愛しく思っているのは。確な気持ちなんだ。 だから私は。勢いだったら君を抱けると思ったが……やっぱりダメだ。君が大切だから」 「大佐……」 「あぁ〜、でも中尉の胸の感触を、もうちょっと味わいたかった!!」 「……大佐」 「中尉!今のは、聞かなかったことに」 ツカツカと歩みより、胸ぐらを掴んだ。 掴まれた途端、中尉があまり怒っていないのが分かった。が少し息苦しく感じたのは、自分の唇に触れた柔らかい花の香りのする唇だった。 ほんの一瞬の子供みたいキスは、夢をみる前に終わってしまった。 「これで、あいこと言うことにしましょう」 スッと離れて部屋を出て行く中尉の耳は、少し紅くなっていた様に感じる。 『本当に意外な人だな、リザは……』 ロイは珈琲を一口飲んで、仕事に取り掛かった。 アトガキ 初鋼の錬金術師で同人小説です。 ロイアイにしっかりはまってしまいました。 [次へ#] |