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らぶ・ろまんす
K
綱吉は目を閉じたまま、思いっきり何度も、六道の名前を叫び、そして助けを求めた。
それこそ、綱吉の出せる限りの大声で何度も、呼んだ。

「は…?何叫んでんの?『ろくどーさん』?ハハ、誰だよ、ソレ」
綱吉を抱きかかえている男は笑いながらそういうと、他の二人の男らは「ひっ」と小さく声をあげた。
だが、綱吉を抱きかかえている男は、綱吉の方しか見ていなかったのでそれには気づかずにいた。
「『ろくどーさん』とやらに、助けを呼んだって無理だよ?」
男はそう言ったあと、綱吉の顎をくいっと持ち上げた。
そして男は目をつぶって徐々に口を近づけてきて、綱吉の口とひっつくまさにその瞬間、綱吉は思いっきり瞼をぎゅっと閉じた。
しかし、口に何かが押しあてられる感触は一向に起こらなかった。
代わりに感じたのは温かく体全体を包まれる感覚であった。
不思議に思った綱吉は徐々に目を開けて周りの景色と、自分のいるところを見てみると、


「貴様ら…、この子に手を出したらどうなるか、わかってるんですか」


そこには、顔に怒りを浮かべた六道骸がいた。


綱吉は六道に抱きしめられるかのように、彼の左腕の中にいた。


「おい…!六道だぜ!やばいぞ!」
そのような声を発しているのは、綱吉を抱きかかえていた男ではない気の少し弱そうな男であった。
「貴方達には、地獄を見せて差し上げますよ」

そういって六道は妖しく笑うと、圧倒的速さでその男3名をなぎ倒したのだった。
それも綱吉を腕に抱えたままで。

気づいたら、男たちはその場に倒れていて、特に綱吉に触れていた男は酷く殴られたようで、気絶してしまっているようだった。


「大丈夫ですか」
六道はそういって、綱吉の体から手を離した。綱吉はそれが少し残念に思いながら、自分も一歩足を下がらせた。そして、小さくうなづきながら答えた。
「あ…うん」
顔を上げられない。
もちろん、それは先ほど自分が彼に対して酷い発言をしたからというものあるが、それより、それよりももっと…
「どうして、顔をあげてくれないのですか」
六道はゆっくりと綱吉の頬に手を差しのばそうとした。
しかし綱吉は差しのばされた六道の手に綱吉はほんの少しだけ身体をびくつかせた。そのわずかな震えに六道は敏感にも気づき、差し出した手をむなしく空中に漂わせた。

「…僕のことが嫌いになりましたか」
六道は切なそうに綱吉に問いかける。するとまたも綱吉は身体をびくっとびくつかせた。しかし今度は、ゆっくりとゆっくりと顔をあげ、そして六道の顔をきちんと見た。
綱吉の見た六道の顔はとてもつらそうな表情に見えた。
その表情に綱吉の心は痛み、またも六道から顔を背けてこう言った。
「嫌い、じゃないです」
「だったら…」
「でも!」
綱吉は六道の声を遮り大声を上げる。
その突然の大声に、少しびっくりし、唾を飲み込んだ。
「もう、会えないんです」
そう言った綱吉の顔は悲痛を込められたもので、目元はほんのりと赤かった。
「どうして!」
「どうしてそんなこと言うんです!?」
六道は今度は躊躇することなく綱吉の両手首をつかんだ。
「嫌いじゃないならッ、嫌いじゃないんだったら!」
六道はそう言うと綱吉の華奢な体躯を思い切り抱きしめた。
「ッ」
「『もう会えない』なんて言わないで」
六道はそう言って綱吉の肩に顔をうずめてからこう言おうとした。
「僕は、君のことが…」
「言わないで!」
「待って、言わないで」
綱吉はそう言ってから、六道の広い胸元に手を置き、彼の身体を少しつっぱねた。
そしてじっと涙に濡れた瞳で六道の顔を見つめた。

「六道さんは…俺のこときっと、嫌いになります」
「、どうして」
六道は綱吉の肩を掴み、少し揺らしながらそう言った。
「どうして、って…俺が、嘘ついたままだから…」
綱吉の言葉を六道は理解できないままであったが、綱吉が六道の言葉を待たず次々と話し出すから、彼は綱吉の言葉を理解できるよう精一杯追った。
「俺…、ほんとは、六道さんの思ってるような人じゃないッ」
綱吉は前髪を左手でぐしゃぐしゃにしながらそう言う。
六道はそんな綱吉を見て、彼の頬をそっと触った。
「僕が思っているあなたと本当のあなたが違うと…?」
「…はい」
綱吉は大きく息を吸い込んだ。そしてゆっくりと息を落ち着かせるように吐き出した。
「俺は…本当は女の子じゃないんです」

「だから…、六道さんとはもう会えない」






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あきゅろす。
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