「真雪ちょっと良いか?」
「凛さん、いつ帰ってきたんですか?」
ノックとほぼ同時に入ってきた凛に驚きつつも、三日ぶりに会う姿に真雪は笑みを見せた。
「お仕事、終わったんですか?」
「悪かったな留守中に家の事任せて」
凛は後ろ手にドアを閉め、ソファーに座る真雪に足を進めた。
「そんな事ないです、おかえりなさい凛さん」
「ああ」
その場で立ち上がって凛を迎えれば、穏やかな表情で応える凛は真雪の頭に手を置いた。
真雪の背に手を添え、凛はソファーに促す。
先に腰を下ろした凛の真向かいに座ろうとすると、凛は真雪の手首を掴みその足を止めた。
「凛さん?」
「そんなに離れなくても良いだろ」
「え……きゃっ」
引っ張られた身体が傾くと、真雪は座る凛の胸に飛び込んだ。
「隣に座っても良いんじゃないか?」
「あの……、えと……」
「それとも……」
体勢を崩した真雪の足を掬い、横抱きにして膝の上に乗せた。悪戯っぽくほくそ笑む凛は顔を赤くさせる真雪を眺め、至極楽しそうにしている。
「この場所の方が良いか?」
いつになく強引な凛に言葉が出てこず、見つめられる視線すら外せないで身体を硬直させていた。
「今まで真雪に会えなかった分、お前が足りない。少し分けてくれるか?」
「それ……それは……、どう言う意味です……か?」
真雪のたどたどしい台詞に耳を傾けていた凛は小さくため息をを漏らし、そして顔を近づけた。
「……教えてやる」
「あ、や……、凛さ……」
「私の所に来ないと思えば、真雪の部屋で道草ですか?」
突然の第三者の声に驚いた真雪は身体を跳ねさせて、声のする方に顔を向けた。