目を細めて意味ありげに微笑む榊。 ドアを閉めると、その陰に隠れるドアから施錠する金属音が僅かに聞こえた。 「さ……榊さん……」 「ノックも無しに、女の部屋に入るような男だったか?」 焦る真雪をよそに、凛は真雪を抱きかかえたまま平然として榊に声をかけた。 「真雪の部屋から妙な話し声が聞こえたもので……。すいませんでしたね」 「なら少し遠慮してくれ」 「どうしてですか?」 「見ればわかるだろう?」 険悪とも取れる緊迫した空気に真雪は巻き込まれ、近寄る榊と自分を抱く凛を焦りの色を見せながら交互に眺めた。 「私にも真雪を分けてください。凛ばかり独り占めは狡いですよ」 乱れることの無い口調や声色のまま榊は凛の背後に立ち、肩に手を置いた。 怪訝そうに顔を歪めた凛は瞬きを繰り返す真雪に視線をやり、押し黙る。 肩に置かれた手を振り解く事も返事をする事もせず、凛は細く息を吐いた。 「……今日だけだぞ」 「おや、いつから真雪は凛のモノになったんですか?」 小さく笑う榊は凛から手を離し、ソファーの前に回りこんで凛の隣に腰を下ろした。 真雪の背後に居る榊に身体を捻って表情を窺えば、満面の笑みで真雪の頬に触れてきた。 「私も混ぜてくださいね」 「混ぜて……?」 「不本意だが」 「たまには複数も楽しいのでは?」 「あの……」 榊の言葉に思案する凛は寄せていた眉を解き、いまだ状況を飲み込めていない真雪を一瞥した。 そして視線を榊に戻すと見合わせた顔は僅かに笑みを見せていて、真雪の頭上で無言で会話をしているように見えた。 真雪の言葉には誰一人返事をせず、険悪だった空気が一転して妖しい雰囲気へと様変わりする。 真雪の頬に触れる榊の手がいやらしくなめまかしい動きに変わり、腰を抱いている凛の手に力が込められた。 |