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愛しき殺し屋
小さな密室3



全ての商品は宅配される事となり、手ぶらで駐車場まで向かった。


「あんなにたくさんの服いらなかったんですけど」

「真雪には迷惑でしたか?」

「そんな事!……ないですけど、でもなんだか悪くて」

「私達からの真雪へのプレゼントだと思って、受け取ってください」

「はぁ」


榊に甘やかされる真雪はどこかくすぐったく感じ、眉尻を下げて申し訳なさそうに笑った。
そんな真雪を見て、榊は腕時計に目をやる。


「もうこんな時間ですから食事して帰りましょう」

「でも……凛さん一人で夕食の準備するんですよね」

「真雪が服を選んでいる時に、凛には私が連絡を入れておきました。心配しなくても大丈夫ですよ」


抜かりのない素早い対応の榊に頭が下がる真雪は、素直に頷いた。


それから榊の行きつけだと言う割烹料理の店に赴いた。
こじんまりとした店は隠れ家的な装いで、真雪は静かな時と料理を満喫した。


「美味しかったです、ご馳走様でした」

「気に入ってもらえて良かったです」


店を出た二人は、すっかり暗くなった空の下を歩いた。


「今なら夜景が綺麗ですね。少し見に行ってみませんか?」

「行ってみたいです」


駐車場までの道すがら、榊の提案で寄り道をする事となった。

車に乗り込み、幾分か空いた道はスムーズに走る事が出来た。
車を走らせる榊は街を抜けてどんどん進む。
平日のせいか、すれ違う車も殆どいない道は林の中へと入って行った。


「私のとっておきの場所に案内しますね」


ハンドルを握る榊は視線を前に向けたまま話した。
どんな場所に連れて行ってもらえるかと、逸る気持ちに真雪の顔も必然的に笑みが零れる。


「着きましたよ。ここです、夜景が一望できますよ」


林を抜け急に視界が開けると、街の明かりが眩しいくらいに眼下に広がる。


「……うわぁ、すごい。こんな場所があったんですね……」

「あまり人に知られていない、穴場ですよ」


車が止まると真雪はいそいそと車を降り、夜景を食い入るように見つめた。

榊はうっとりと眺める真雪の隣に行き、喜ぶ真雪を見て微笑んだ。


「ここは私が疲れた時に良く来るんです。ここに誰かを連れて来たのは、真雪が初めてです」

「良いんですか?そんなお気に入りの場所に連れてきてもらって」


首を傾げ覗き込む真雪の頭を撫で、榊は優しく言った。


「真雪だから連れて来たんです。私のお気に入りの場所を、知ってもらいたくて」


でも、他の人には内緒ですよ?と悪戯っぽく口に人差し指を当てた榊に、昼間のときめきに似た動悸が蘇る。


「は……い」


見惚れる真雪は榊から目が離せなくなり。
小さな外灯に照らされ、見つめ合う二人の距離が徐々に近付く。



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あきゅろす。
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