「何か叫び声がしなかったか?」 「いや、しかし柳川さん遅いですね」 パーティー会場には、武島、忠、尊の三人。 ワインを取ってくると言って、柳川が出てから三十分は経つ。 「……ちょっと様子見てくる」 「私は柳川さんを見てきますよ」 皐月の断末魔を聞いた武島は叫び声の元を探しに、忠は柳川が気になりワインセラーを探しに部屋を出た。 「尊は柳川さんと入れ違いになると悪いから、ここで待ってろ」 尊はそんな忠の声を聞こえない振りをして、窓の外をぼんやりと眺めていた。 「真雪……」 誰も居ない部屋で、いくら飲んでも酔えない尊は一人呟いた。 どこにいても拭えない孤独感は真雪の名を口にするだけで一層酷くなり、またグラスを傾けた。 息ばかりが熱くなり、頭の中は益々冷めてゆく。 いつまで続くのかわからない空虚な気持ち。 満たされる事のない尊の心は、アルコールで紛らわす事でしか出来ないでいた。 その頃、真雪は。 「この部屋に居れば良いって言われたけど……。何のためにここに来たのか、わからないよ」 榊に一階の一室に連れてこられ、留守番しててくださいねと何度も念を押され、ほどなくして榊は部屋を後にしていた。 「邪魔はしたくないんだけど……。でも、どうしよう」 今すぐにでも憎い仇に刃を向けたい気持ちと、邪魔をしてはいけないと言う気持ちの板ばさみとなり、暗い部屋の中で歩き回り葛藤していた。 |