「ったく、柳川さんは何をしてるんだか」
重く響く足音で苛立ちを表しながら忠は廊下を歩き、地下のワインセラーに行くと言い残した柳川を探しに目的地へと向かう。
ほどなくキッチンの側にある地下室のドアらしき物を見つけ、ドアノブに手をかけた。
しかしドアノブの音ではない、聞きなれない音が忠のすぐ後ろで鳴った。
咄嗟に後ろを振り返ると、そこには見た事のない長身の男が立っていた。
自分の頭に銃を突きつけて。
「誰だ……」
「竜崎凛。俺の顔を覚えておけ、お前の最期を見届けに来た俺の顔をな」
「何だとっ!?……――っ!」
凛は銃口を忠の頭に強く押し当て、騒ごうとする忠の動きを牽制する。
「お前は自分が何をしたかわかっているな」
「し、知らない!何の事だ!?」
威圧的な声の凛に忠はたじろぎ、大きな動作で首を振った。
凛は無言のまま即座に銃口を下ろすと、乾いた音をたてた。
「うっ!あああああぁ!」
「わからないか?」
サイレンサーの付いた銃は、忠の足の甲を撃ち抜いていた。
一瞬何が起こったのかわからないでいた忠は不意に訪れた焼けるような激痛に耐えられず、足を抱えて床に転がった。
「ひッ、い、痛いぃ……!何……なんだ……」
「お前は罪もない人を殺した」
凛の言葉と同時に再度銃を向け、戸惑う事なく忠に発砲した。
「がああああ!あ、……あ……。痛い、ひぃ……痛い……」
「自分の兄夫婦を殺した、違うか?」
もう一つの足を撃ち抜かれた忠は、痛みで足を触る事も出来ず四肢をダラリと投げ出していた。
「あ、あ……なぜ、それを……」
「お前に言う必要はない」
淡々と話す凛は、忠の身体に静かに狙いを定める。
「ひっ、俺は尊の言う通りやっただけで……、俺は悪くな……!ひぎゃあぁああ!」
忠が言い終わる前に、凛は投げ出された左腕を撃ち抜く。
右手で左腕を押さえ大きく悲鳴を上げる忠は肩で息をしながら、涙で顔を汚し痛みで歪んだ表情を見せる。
「自分の息子を止めなかった、お前にも責任はある。ましてそれに賛同し、実行した」
「俺は関係ない!俺は関係ない!止めてくれ、殺さないでくれ!」
「お前は実の兄を殺して、何とも思わないのか?」
凛の銃口が忠の頭に向けられる。
暫しの沈黙の後、忠は狂ったように大きな声で笑い声を上げた。