見ず知らずの来訪者にたじろぎ、柳川は持っていたワインを落としてしまう。 赤い飛沫を飛ばし、ワインボトルが辺りに細かく砕ける散った。 「あーあ、もったいねぇ」 割れた破片を踏みしめ、落ちたワインボトルのラベル部分を男は拾い上げる。 「シャトー・ラフィット・ロートシルト1904年か……これ100万くらいすんだろ?」 「うあ、あ……」 得体のしれない男に恐怖感で一杯になり、柳川は後ずさりし壁に背中をつけてしまった。 ラベルの貼り付いたガラス片を放り捨て、和泉は動けなくなった柳川に近付く。 「お……お前、何者……」 「殺し屋」 「なっ!」 「お前を殺す俺の名は和泉様だ、あの世まで忘れるんじゃねーぞ」 和泉はすかさずナイフを振り上げ、柳川の目の前を鈍い色の光が掠める。 「おっさん、動くなよ。動けばもっともっと苦しむ事になるぜ?」 「う……あ……」 「まぁ簡単には殺さねーから、動いても動かなくても一緒だけどな」 「ま、待ってくれ!なんで俺が殺されなきゃならないんだ!?金か?金ならやる、だから殺さないでくれ!な、頼む!」 心底愉快そうに笑う和泉に、柳川は尻餅をつき命乞いをし始めた。 殺される理由など知らぬと言う柳川に、和泉の怒りがたちまち込み上がる。 「お前……自分のした事わかってんのか?金?んなモンいらねぇ。俺が欲しいのはお前のその汚ねぇ命だ、真っ黒に染まり上がったその命がな!」 和泉の台詞が終わると同時に、柳川の突き出た腹をナイフで切りつけた。 「うわぁぁぁぁ!痛い!や、止めてくれ!」 「これくらいで痛いだぁ?もっと痛い思いして死んだ奴を知ってんだろ!?」 切られた腹部を押さえながら青ざめる柳川の脳裏に、点と線が繋がる感覚がした。 「ああ……あ、ま、まさか御堂建設の……」 「テメェ等が殺した奴の事ぐらい覚えとけよ、豚め」 |