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愛しき殺し屋
*赤き一線2



見ず知らずの来訪者にたじろぎ、柳川は持っていたワインを落としてしまう。
赤い飛沫を飛ばし、ワインボトルが辺りに細かく砕ける散った。


「あーあ、もったいねぇ」


割れた破片を踏みしめ、落ちたワインボトルのラベル部分を男は拾い上げる。


「シャトー・ラフィット・ロートシルト1904年か……これ100万くらいすんだろ?」

「うあ、あ……」


得体のしれない男に恐怖感で一杯になり、柳川は後ずさりし壁に背中をつけてしまった。
ラベルの貼り付いたガラス片を放り捨て、和泉は動けなくなった柳川に近付く。


「お……お前、何者……」

「殺し屋」

「なっ!」

「お前を殺す俺の名は和泉様だ、あの世まで忘れるんじゃねーぞ」


和泉はすかさずナイフを振り上げ、柳川の目の前を鈍い色の光が掠める。


「おっさん、動くなよ。動けばもっともっと苦しむ事になるぜ?」

「う……あ……」

「まぁ簡単には殺さねーから、動いても動かなくても一緒だけどな」

「ま、待ってくれ!なんで俺が殺されなきゃならないんだ!?金か?金ならやる、だから殺さないでくれ!な、頼む!」


心底愉快そうに笑う和泉に、柳川は尻餅をつき命乞いをし始めた。
殺される理由など知らぬと言う柳川に、和泉の怒りがたちまち込み上がる。


「お前……自分のした事わかってんのか?金?んなモンいらねぇ。俺が欲しいのはお前のその汚ねぇ命だ、真っ黒に染まり上がったその命がな!」


和泉の台詞が終わると同時に、柳川の突き出た腹をナイフで切りつけた。


「うわぁぁぁぁ!痛い!や、止めてくれ!」

「これくらいで痛いだぁ?もっと痛い思いして死んだ奴を知ってんだろ!?」


切られた腹部を押さえながら青ざめる柳川の脳裏に、点と線が繋がる感覚がした。


「ああ……あ、ま、まさか御堂建設の……」

「テメェ等が殺した奴の事ぐらい覚えとけよ、豚め」






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