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愛しき殺し屋
赤き一線1



「今日のために、特別にとって置いたワインがあるんですよ」


柳川はにこやかに部屋にいた人物達に声をかける。


「柳川さん、俺はウィスキーしか飲まねぇから」


武島は柳川にそう告げると、グラスに入ったストレートのウィスキーを一飲みする。


「武島さんはそうでしたね。では、御堂さんご夫妻はどうですかな?」

「私達もいける口です、尊もいけますよ」

「じゃあ今持ってこさせますよ」


部屋にある内線でメイドを呼ぶも誰も出ない。
携帯で秘書に電話をするが電源が入っていないのか、こちらも応答が無かった。


「なんだ!こんなときに限って、使えない奴等めっ!クソッ」

「どうかしたんですか?」

「どうもこうも誰も電話に出ないんですよ。ったく……仕方が無い、私が持ってきますからちょっと待っててください。地下のセラーに置いてあるはずなんだが」


ブツブツと文句を言いながら、柳川は部屋を出て地下に向かった。


途中パントリーや厨房を覗くが、誰も居らず火の気も全くなくなっていた。
ただキッチンワゴンには、今しがた用意されたばかりの温かそうな料理が置いてあった。


「……なぜ誰も居ない」


換気扇ばかりが大きな音をたてていて、静かな厨房を益々際立たせる。
柳川は一瞬にして酔いが醒めるような感覚に陥ったが、気を取り直しセラーのある地下室へ向かった。


厨房に隣接してある地下室に足を踏み入る。
ワインを美味しく保つため、一定の温度に設定されているセラーは空気が冷たく、アルコールで熱くなった柳川の頬を掠める。


「ここらにあると……おぉ、これだ」


目当てのワインを見つけ満足そうに笑い、その場を去ろうとした時。
それまで何も感じなかった、人の気配がした。

酔いどれの足取りでゆっくりと振り向くと、薄暗いセラーに一つの影。


「あぁ?誰だ貴様っ」

「俺か?豚には教えられねぇなぁ」


聞いた事のない男の声に、柳川は血の気が引いていった。




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あきゅろす。
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