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愛しき殺し屋
和泉と風邪6


翌日。


「凜さん、おかえりなさい」

「あぁ。悪かったな、食事の準備任せっ放しで。和泉の事も」

「そんな事ないです。和泉くん元気になったみたいですし、良かったです」


笑う真雪はどこか力無く、凜は眉を僅かにしかませてまじまじと見つめた。


「真雪、顔が赤いぞ。どうした」

「顔が赤いですか?……うーん、凛さんが歪んで見え……る、様な……」


カクンと膝が折れ、地に着きそうになった時。


「真雪!」


咄嗟に伸ばされた腕に抱えられた。
凜が何か言ってるのはわかっていたが、真雪の意識は途切れてしまった。


次に真雪が目を覚ました時は、見慣れた天井が広がっていた。


「起きたか、具合はどうだ?」

「あ……れ?凜さん……」

「和泉の看病してて、うつったか」


和泉に抱き締められながら眠っていた事を思い出し、あの時にでもうつったのかと少し恥かしくなる。


「ともかく寝てろ、後で薬持って来るから」

「……はい」


凜の大きな掌を額に感じ、真雪はまた眠りについた。


静かな部屋に和泉は足を忍ばせる。
ベッドには少し赤い顔で眠る真雪が、静かに寝息をたてている。


「やっぱり、キスしたからうつったのか?悪ぃな……真雪」

「そんな事をやれば、うつって当たり前だ」


誰も居なかった部屋、戸口には気配もなく凜が立っていた。

驚いた和泉は振り向く事が出来ず、殺気に似た何かが背中に感じた。


「あは、はは……」


力なく笑う和泉は、真雪の頭をソッと撫でて小さく息を吐き出した。


「悪い……」


だってな、あの時は無性に真雪が欲しかったから。

こんな時なら、独り占めしても良いかなって思ったんだ。


和泉の独白は、誰にも聞かれることのなよう、心の中で呟かれていた。




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