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愛しき殺し屋
凛の災難3



その途中。


「凛と子猫ちゃんはどこに行くの?」


今度はコイツか。


「何の用だ」

「そんなつれない事言うなよ。ツンデレなんだから〜。いや、凛の場合ツンツンか?」


ケラケラと笑う九条。
いつもの能天気っぷりに、頭痛がする。


「慎哉くん、こんにちは。これから凛さんとお昼ご飯食べに行くんです」


微笑む真雪はさっきと違い、だいぶ晴れやかになっていた。


「だから、お前が来ても飯はない。だから帰れ。それか早く榊の所へ行って、用事でも片付けて来い」

「子猫ちゃんは良い娘だね〜、ちゃんと挨拶してくれる。誰かさんと違って」


ボソリと小声で喋る九条の言葉を素通りし、俺はガレージへ真雪と共に歩みを進めた。


「良いんですか?慎哉くん放っておいて」


見上げる真雪の視線は俺に向けられていて、あまりにも真っ直ぐな瞳に俺は思わず視線を逸らしてしまう。


和泉やライカと大して歳の変わらない、少女のようなあどけなさが残る真雪に、俺は赤面してしまう。

いい年して恥かしいだろ、俺。


女なんて面倒だと、疎遠にしていたしっぺ返しなんだろうか。
遊びの女ならともかく、俺を本気にさせるような女と巡り逢った事なんてない。

今更女にどう接して良いかわからないなんて、な。

思わず自嘲してしまう。


「凛さん?どうしたんですか、急に黙っちゃって」


俺を覗く真雪は、眉をひそめ怪訝そうな顔でいる。

お前の事を考えていたなんて、口が裂けても言えない。
どんな顔で俺はそんな事を言えるんだ?


まぁ、九条やライカは普通に言えるんだろうけどな。
時に能天気に軽口を叩ける、奴等が羨ましく感じる。


「何でもない。乗れ、行くぞ」

「はい、どこでお昼にしましょう」

「どこで……か。そうだな」


真雪が望むなら、好きな場所に連れて行ってやる。
俺が隣に居れるなら。


少しばかり真雪を独占できる時間、ゆっくりと堪能しよう。

今日の嫌な事が全て忘れるくらい。


――帰ったら、ウェッジウッド……発注しなければ。


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