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夢小説(その他)
旅先のトラブルは厄介(銀魂 前編)
※前編は誰も出てきません。好きな選択肢を選んで後編にお進み下さい。




異国の船が飛び交う青い空を見てアサヒは、ほうと息を吐いた。

「ここが江戸かぁ……賑やかなトコだなぁ」

のほほんとしたアサヒの言葉に、隣に立っていた男がくすりと笑う。

「お嬢ちゃん、江戸は初めてかい?」

その言葉にアサヒはコクンと頷いて

「はい、兄に会いに来たんです!」

そう明るく答えたアサヒに男は

「そうかい、そりゃあ、お兄さんも喜ぶだろう!」

と笑った。

「それで、どこまで行くんだ?」

男の問いかけにアサヒは、ごそごそと服のポケットを漁る。

「えっと………わッ、すみません!」

住所を書いた紙を取り出そうとしたアサヒは後方からやってきた人物に背中を押され振り返る。

一瞬の油断。

くいっと自身の荷物を引かれる感覚。

「えーッ!ちょっ!ドロボー!」

アサヒがその言葉を発するまで数秒の間があった。

親しげに話しかけてきた男と背後からぶつかってきた男が颯爽と走って行く姿が目に入る。

「待てぇ!」

そう叫びながら追いかけるが、距離は縮まらない。

道行く人が数人振り返ったが、それだけだった。

江戸って冷たい。

最初から不慣れなあたしをカモにするつもりだったんだ。

そう思えば、危機感のない自分に腹が立つ。

悔しいやら、悲しいやらで………自然と瞳に涙が浮かんだ。

畜生、絶対に捕まえてボコボコにしてやる!

そう心に誓えば、

「きゃーッ!泥棒ー!」

という女の悲鳴。

「誰か捕まえてぇええ!」

声の方角を見れば、女物の鞄を握った男がこちらに向けて駆けてくる。

あたしの位置だったら捕まえられる。

でも間違いなくあたしの荷物を盗んだ犯人は捕まえられないだろう。

そんな事してる間に見失うに決まってる。

第一、江戸の人冷たいし………あたしだって困ってるんだから別に助けなくても――――

でも、もしあたしが捕まえなかったせいで犯人が捕まらなかったら?

でもでもあたしの荷物だって盗まれて――――

あぁッ!もう!






『本当にありがとうございました。』

心底、恐縮した様子で礼を述べた女の姿を思い出しアサヒはゆっくりと息を吐いた。

悔しくない。

良いことしたんだから。

結局、自分の荷物盗んだヤツを見失ったとか、うん、そんなの全然気にしてない。

必死に自己暗示をかけながらふらふらとアサヒは足を進める。

「まぁ、住所は分かるし………」

ガサリとポケットから折り畳まれた紙を取り出す。

別に海を渡るワケじゃない。道行く人に聞きながら行けば…………


バシャッ


ぽたぽたと垂れた水滴を拭いチラリと視線を動かせば、柄杓を持ったまま凍りつく少女が一人。

「ごっ、ごめんなさい………。」

真っ青な顔をした少女は、バタバタと近寄ると土下座でもしそうな勢いで頭を下げる。

「ごめんなさい!ごめんなさいッ!どうしよう!私、そっそかしくてッ」

泣き出しそうな顔で言われて怒鳴りつけるほどアサヒも心は狭くない。

濡れたと言えど服の一部だし、この天気だ。

すぐに乾くだろう。

まして

「テメェ、水まきもろくに出来ねぇのか?!この役立たずッ!」

鬼のような形相で出てきた店の主の前でなら尚更だ。

「あ、あの!大丈夫ですから、そんなに怒らないで下さい!」

アサヒの弁護に店主は申し訳なさそうな顔をして、聞き慣れた謝罪を述べ………少女の頭を抑えつける。

真っ青な少女の姿にアサヒはおろおろと狼狽えるばかりだ。

「悪いのはあたしです!だからその子を責めるのは、やめて下さい!」

鋭いアサヒの声に、ピタリと店主は動きを止める。

「あたしが走って来たせいで運悪く、水を被ったんです!」

嘘だった。

少女もぽかんとした顔をしている。

店主の顔には、早とちりをしたとばかりに、羞恥の色が浮かんでいる。

「ごめんなさい。あたしのせいで!」

ぺこりと頭を下げたアサヒに店主は、安堵の息を吐き店へと戻る。

残された少女だけが申し訳なさそうに顔を歪めていた。

「あ、あの………」

謝罪とお礼を口にしそうな少女に手を振りアサヒはその場を後にした。

そうでもしないと、泣き出してしまいそうだったからだ。

手の中の紙は水に濡れ、文字が溶けてしまっていた――――






はぁ………

大きな橋の欄干に腰をかけアサヒは大きなため息をついた。

「これからどうしよう………。」

徐々に赤みを増す空に涙が出てくる。

もっと気を付けていれば良かったのだ。

荷物を盗られたりしなければ、とりあえず今日は宿でもとって明日探すか。なんて前向きな発想も出来ただろう。

そもそも住所を書いた紙だって、油性のインクで書けばこんな事にはならなかった。

何より、事前に兄に連絡しておけば良かった。

来ると伝えていたなら優しい兄の事だ。

仕事があるなどとブツクサ言いながら迎えに来てくれたに違いない。

ぐすッ

ごしごしと目元をこすって泣いたところで何一つ先に進まない。

でも、立ったところで進むべき道も分からない。

しゅんと頭を垂れて俯く。

自己嫌悪に陥った頭が聞き慣れない声を拾ったのはそんな時だった。

顔を上げるとそこには…………



A 黒い服を着た男

B 銀髪の男

C 不思議な生き物

D 気のせいだった

―――――――――
前編終了

ようやくキャラクターが登場する後編へどうぞ。



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あきゅろす。
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