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夢小説(その他)
鬼ごっこする人この指とまれ(ZONE-00 ギャグ?)
※キャラクターが主人公も含め全体的に破壊されています。観覧注意




「逃げんじゃねぇッ!」

「止まりなさい。」

「待って」

背後からかかる声は、言葉こそ違えど一様にあたしに『死ね』と告げているわけだ。

廊下を駆け抜けながら、あたしは自分が一体何をしたのかと、見えない何かに問い続けた。



おかしい。

あたしは、お気に入りの公園の片隅…鮮やかなくらいの芳香を放つ金木犀の枝という特等席に糸をかけ、柔らかなベッドで文字通り花の香りに包まれながらお昼寝をしていたハズなのだ。

それなのに、何故…何故あたしはこんなヤツらに追いかけ回されているのでしょうか??

「うふふふふ、そんなの決まっているじゃない。あたしが、あなたを連れて来たのよ。」

鈴のなるような声が後方から響く。

「同じ蜘蛛だけあってッ…以心伝心ってヤツですねッ!」

絹華の言葉に吐き捨てるように返せば、女はにこりと笑った。

「アサヒとあたしが愛し合ってる証拠よ♪」

「寝言は寝て言え!蜘蛛女ッ!」

ビシリと後方を走る三人組…その中央にいる絹華へ向かって指を立てる。

ジェスチャーだけで、『FUCK YOU』と伝えれば、絹華の綺麗な顔が歪む。

「躾るのが楽しみだわ、アサヒ」

息一つ乱す事のない絹華とすでに倒れそうなあたし…この差は、一体何なのだろう。

考えても無駄だと分かっているのに考えずにはいられない。

必死に速度をあげれば、ほんの少しだけ後方の声が遠ざかった。

「埒があかねぇ!月彦、あの女の両足打ち抜けッ!」

そんなとんでもない指示を出したのは、朧児だ。

「馬鹿言うなッ!そんな事したら七代先まで祟ってやるっ。」

そう吼えれば、後方からお前馬鹿じゃねぇの?と言わんばかりの微妙な空気が漂ってきた。

ハッキリ言って脅しにもならないような言葉である。

彼等の反応は正しい。

しかし、言い訳をするならもともと女郎蜘蛛という魔物は、決して強い魔物ではないのだ。

その名が知れ渡っているのは、単に人間を襲う魔物として人間が恐れたからに過ぎない。

ハッキリ言おう。

人間にさえ討ち取られる女郎蜘蛛が、ミヅチやヘルハウンドと戦えば、無難に即死だ。

これでヤタガラスなんて出てきたら…そう考えてアサヒは首を横に振った。

噂をすれば影が出る。余計な事は考えるべきじゃない。

「鬼ごっこ?楽しそう」

…………甘い柔らかな声。

ギギギっと錆び付いたドアのように首を動かせば、上等なシャンパンのように光り輝く淡い金髪と金の瞳の少年が隣にいた。

「アサヒ、紅とも遊ぼーよ」

ふわりと広がった金の翼。

すみません。神様。

あたし、何かしたでしょうか………

「ま、また今度ね★」

あたしは、多分今まで生きてきた中で一番媚びた顔をしたに違いない。

「だぁめ、アサヒは紅と遊ぶの。ふふふっ」

瞳孔、開いてますよ紅緒さん…。

アサヒが恐怖の鬼ごっこに強制参加させられている頃、ゴビでは帰ってこないアサヒについて論争の真っ只中だった。

「おかしい…夕飯前には必ず帰ってくる、そこらの小学生よりも門限に忠実なアサヒが帰ってこないなんて…な、何かあったんじゃ…」

真っ青な顔でうめく千両に白狐はぷかりと煙管から煙を吐き出した。

「お腹がすけば帰ってくるよ。アサヒクンの事だ。公園の片隅ですやすや熟睡してるんじゃないかな?この前、金木犀の枝がどうのって言ってたし…」

ニタリと笑った白狐の言葉に、安吾は渋々といった様子で立ち上がった。

「志萬クン、どこに行くんだい?」

白狐の問いに安吾は、呆れたような顔のまま答えた。

「アサヒを迎えに行く。公園にいるかも知れんのやろ?」

「………ダメだよ。アサヒクンが帰ってくるのを待ちなさい。」

「けど…もう真っ暗やし。」

安吾の言葉通り、外はとっぷりと暮れ、魔物といえど女がひとりが出歩くには遅い時間だ。

「そう、確かに遅い時間だ。でもアサヒクンだって魔物の端くれ。人間に遅れをとったりしないよ。」

「でも万一って事も…」

食い下がる安吾に白狐はにっこりと微笑んだ。

「それにね、門限を破ったとなれば、アサヒクンを堂々とイジメられるじゃないか。」

……………………。

たっぷりと数十秒黙り込んでから、安吾は…「はい?」と聞こえなかったフリをした。

「楽しみだねェ、アサヒクンが泣いて懇願する姿…想像するだけでたまんないよ。」

「やめよ、白狐、アサヒに何をするつもりじゃ。」

クツクツと笑う白狐に冷ややかな声を浴びせ真夜子は呟いた。

「アサヒを苛めるのは、妾と姫の特権…。そうじゃな?」

「勿論よ。」

にこやかに笑う真夜子と姫

端から見れば微笑ましい光景だが、話題は悪魔も逃げ出すほどえげつない。

楽しそうな一同の笑い声を聞きながら、アサヒが逃げ込んできたら1日くらいはかくまってあげよう…そう安吾は心の中で呟いた。





もう、無理。

走れない。苦しい。

ふらふらしながらアサヒは、近くの部屋の扉を開いた。

「ちょっと…休憩、」

畳の上で、ぐったりとアサヒは両手と両膝をついた。

ポタリポタリと汗が畳にシミを作る。

荒い呼吸を整えようと大きく息を吸い込めば、ふと視界が薄暗くなった。

誰かが、あたしの目の前に立っているのがわかる。

本能が見るなと警告するが、そうもいかない。

ゆっくりと視線をあげ、にこやかな微笑をたたえる青年にアサヒは声にならない悲鳴をあげた。

「――――――ッ!」

「おや、アサヒあなたから遊びにきて下さるとは…。」

「…お邪魔しましたッ!」

そこからの動きは、神業に近い。

一瞬で体を反転させ、アサヒは部屋の外へと飛び出した。

よりによって毘沙門の部屋を開けてしまうなんて運が悪いにもほどがある。

屋根を疾走しながらアサヒは叫んだ。

「もう、嫌ッお家帰る。田舎に帰るッ!東京なんて二度と来るものかァ!」

涙で滲んだ視界と後方からの追っ手へ向けられた意識

だから気づくのが遅れた。

道がなくなっている、という重大な出来事に。

「きっ…きゃああああッ!」

悲鳴とともに落ちていく体。

この速度では、強靭な糸を駆使しても助かる可能性はないに等しい。

痛い、痛いよね?

死んじゃうのかな?

ぎゅうっと目を閉じる事でアサヒは恐怖を断ち切る事に努める。

しかし視界をたった事で余計に風をきる音が響きアサヒは激しく後悔した。

冷ややかな風の音

恐怖を増長させる暗闇

そして…

おとずれたのは、柔らかい衝撃

「………ギリギリ、セーフ」

そんな涼やかな声にアサヒはようやく目を開いた。

恐怖を感じたはずのシャンパンのような甘い金髪と金の翼

空のような澄んだ青の瞳

「感謝しろ、アサヒ」

片腕で軽々とアサヒの体を抱き留めた青年はにんまりと笑った。

その笑みを見た瞬間、一気に涙腺が緩む。

「…弁天…」

「ん?」

「怖かったよぉ」

びーびーと子供のように泣き出すアサヒに弁天はクスクスと笑い声を零す。

「はいはい」

ポンポンと背中を叩けばアサヒは、ぐずぐずと鼻を鳴らし答えた。

「帰る。都会は嫌だ。田舎がいい。」

目を真っ赤にしながら喚くアサヒに弁天は眉をよせる。

多分、それは何の解決にもならない上にあちらにすれば好都合だ。

なんせ、邪魔者がいなくなるのだから…。

「アサヒ…」

「何?お家まで送ってくれるの?」

涙目で見上げる顔は、ゾッとするくらい愛らしい。

「…うちで働けば、俺が守ってやる。」

アサヒの顔を見つめ呟いた弁天の言葉は、そこらの女子ならくらりと卒倒するような言葉だった。

弁天もアサヒが頬を染め、小さく頷く事を予想したに違いない。

しかし、アサヒは…

「…三食昼寝、おやつ付きなら。」

「………………。」

台無しだ。

色んな意味で。

「…あの、弁天…顔が引きつってるよ…」

アサヒの呑気な頭が憎い。

「アサヒ」

「なあに?」

「男心が理解出来るまで沈んでろ。」

「へ?ッきゃああああああああああッ」

眼下に広がる海に向けて放られた小柄な少女は、悲鳴の尾をひき…派手な着水の水しぶきをあげやがて見えなくなった。

「…………はぁ、何で俺あいつが好きなんだろう。」

弁天の深い深いため息の意図をアサヒが理解するのはまだ先の話…




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アンケートで頂いたZONE-00オールギャグ夢

欲張りすぎた感がありますが、楽しんで頂ければ幸いです。

匿名希望さん、アンケート参加ありがとうございました。

アサヒさんお付き合いありがとうございました。

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