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紫陽花
3

「…慈雨、窓閉めないと雨が降り込んでた。」


んんんー?
…………幻聴?

って違うか。


重い瞼を上げ、目だけを動かす。
暗闇に慣れた瞳が、すらりと窓辺に立つ影をとらえた。


「…けぇちゃん?」

やっぱりと思いつつ疑問でいっぱいだよ。

どうして?
いつから?
いつのまに?

「……どーしたの?」

もぞもぞと彼の方を向くように寝返りをうつ。
恵ちゃんの表情は暗くて見えないけど。


「あぁ、…窓が開いたままだったから締めに来た。」

「…あっ、……ありがと。」

「…それにしても、また寝てたのか…。」

ふっ、と彼が綺麗に笑う。

「ぅ、……僕の成長期はいまなんだからなっ。」

やたらと発育のいい恵ちゃんとは違うんだいっ。僕は平均だよ!!……たぶん。
それにこれから背だって、体格だって、すっごい男らしくなるんだから。男のなかの漢に!!

こんな雨の日に、すいすいベランダを…

「って…あれ?

けいちゃんどっから入って来たの…?」

「あ?いつも通り、そこから。」

綺麗な指がすっと示したのは…ーー窓。

あ、僕達の部屋は2階で、互いの部屋のベランダがちょうどくっつくような造りになっているんだ。

小さな頃は怖かったけれど、今となっては二人とも当然のようにそこから出入りしてた。

…玄関からじゃ、見つかるからね。
あの人に。


「こんな雨なのに…
かなり濡れた、よね…?」

「あぁ、気にするな、…たいしたことない。」


…いゃ、気にしますから。


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