10
落ち着いたところで、私とななちゃんは浜辺に腰を下ろしたまま雑談中。もちろんパラソルの下で。
「ねーねー、first nameちゃん」
「なんだい、ななちゃん」
私は信号トリオと、その他先輩クルーたちがジャバジャバと海で遊んでいるのを眺めている。
正直、大の大人の男が、しかもごっついオッサンたちが遊んでるその姿はシュールだ。
「悪魔の実って良い?」
「何?ななちゃんも能力者希望?」
ちらっと彼女の顔を伺えば憂いていた。
「やめときな」
「え?」
「確かに、この世界にいると自分が無力に感じる」
「……」
「でも、これは私の罰。ななちゃんには、ななちゃんの罰があるでしょ?」
「私……」
「言わなくて良いよ。それに……私は、やっぱり異世界の人間だからか悪魔の実をコントロールするのは難しかった」
「そうなの?」
それこそ血反吐、吐きながら私は修行した。自分の能力で自分の体を切り刻みながら。
「たがらやめときな。言ったでしょ?」
にこりと私は彼女に笑顔を向けた。
「ななちゃんを護るって。戦うのは私の役目。さて、ななちゃんの役目は何でしょう」
悩め悩め悩め、きっとあなたにだって役目があるさ。自分の存在意義を見つけて。私は、やっと少しずつ見えてきた気がするから。
「そっか、うん、そーだよね。私はいーや、強くならなくて」
開き直った彼女は強くなる。
「皆、強いしね。私が強くなる必要なんてないじゃん!」
「そーそ」
うんうん、と頷く。結局、私たちは適当で中途半端な存在なんだろう。
「で、first nameちゃんは誰落ち希望なの?」
「そりゃー、私は鰐さんひとすj……」
慌てて口を押さえても、すでに遅し。ニヤリと笑った彼女と目が合った。
「やっぱりね」
最悪だ。誰にも言わないつもりだったのに。最悪だ。
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