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あーあーあーあー、だるっ。ちょーだるっ。



「おいおい、さっきから何唸ってんだよ」


「べっつにー、てか煙いから」



レッドの煙草の煙が、もろに顔にかかるから手で払う。


そのうち肺がんになるんじゃねーか、と心配になるこの頃。


ただ今、夏島の街に買い物に来ています。言い出しっぺは、ななちゃんです。



「first nameちゃん、first nameちゃん、あの店行こー」



私の腕を引きながら浮き足だっているななちゃんは、買い物好きの普通の乙女だ。



「はいはい」


「もー、まだ拗ねてんのー?」


「べつに拗ねてねーし」


「拗ねてんじゃん」



誰のせいだと、私より少し背が小さい彼女を、じとっとした目で見下ろす。



「大丈夫大丈夫、誰にも言わないから」



パンパン私の肩を叩く彼女は、さぞ楽しそうだ。


当たり前だ、言ったら刻むぞ。



「何だ何だ?first name、弱味でも握られたか?」


「黙れ黄色」



ピシャリと言い放ち、ななちゃん連れて店に入った。



「で、何買うの?」


「別に特に目的はないんだけど……あ、これ素敵」


「へぇ、良いじゃん」


「でしょ?よし、買い」


「は?」



ななちゃんは、ふらふらと店内を歩き回り満足そうに笑った彼女の腕の中には服が、こんもり。



「なんか、彼女の買い物に付き合わされてる彼氏の気持ちが分かった気がする」



人の買い物に付き合うのは、こんなに疲れるものなのか。


トリオも、ぐったりしている。



「first nameが、あんま買い物しねぇから、すっかり忘れてた。女の買い物っていったら、こうだよな」


「疲れた。何もしてねーのに疲れた。てか、一つの店でどんだけ買い物してんだよ」


「ななさん、お金は大丈夫なんですか?」



グリーンが心配気に聞けば「もちろん」と彼女は笑う。


そりゃそうだ。赤髪の女が不自由してるわけないじゃん。



「first nameちゃんは、いいの?なんか、一緒に買おうか?」


「んー、じゃあコレ」



服の山の上に乗せたのは靴紐。不吉な予兆として、昨日切れてしまったのだ。



「お前、まじで女じゃねーな」



失礼なイエローの腹に肘鉄入れてやった。私だって買う時は買うさ。


まさか、ななちゃんと平和に買い物する日が来るなんて思ってもみなかった。



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あきゅろす。
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