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過去拍手
醒夏 番外 バレンタインF



「好きだよ、セイ」


背中に手が回される。


「この心が、開いて見せてあげられたら良いのに……な」


ギュッと身体を抱き返されて、胸の奥が何かで詰まる。


「そしたら……きっとセイはビックリするよ。嘘って思うかもしれないけど、いつもセイの事ばかり考えてるから……」


『クサかったかな?』
と続く言葉に聖一は軽く首を振り、自分の視界が歪んでる意味を理解出来ずに貴司を見た。


「何か違うんだ……貴司が俺の言うこと聞いても、前みたいにスッキリしない。だけど、一つだけ……さっき分かった。今の俺は、貴司の事、苦しめるより抱きしめたい」


「じゃあ……また少し、セイに近付けたのかな?」


それがどうゆう意味なのかまでは自分でも良く分からないのに、貴司は何かを悟ったように指を伸ばして目尻に触れ、そこを優しく拭ってゆく。


「俺……何で?」


「何でだろう……でも俺は、少し嬉しい。セイは滅多に気持ちを外に出さないから……」


きっと試すより大切な事があるのが分かって来たのだと……貴司は内心感じたけれど、それ以上は言葉にせずに彼の頭を優しく撫でると、少しだけ腕に力を込めて顔を近付けキスをした。


想いは通じているのだから、ゆっくり歩み寄れば良い。


「好きだよ」


心を込めて再度告げると、薄い微笑みを唇に乗せて
「俺も」
と返した聖一が不意に貴司を抱えて立ち上がった。


「なっ……セイ」


「抱くよ」


短く宣言されてしまえば、いくら身体が疲れていようが受け容れたいと思ってしまう自分がいて……。








「んっ……」


ベッドの上へと貼付けられ、自分に跨がる端正な顔を見ながら貴司はチラリと意識をクローゼットの方へと向ける。


―――渡すのは、明日になりそうだな。


何日か前に買っておいた、チョコレートと腕時計。

働いて直ぐの誕生日には高くて手が出せなかったが、冬のボーナスと貯金を足してようやく買う事が出来た。


―――喜んで、くれるといいな。


今している腕時計は昔自分が贈った物で、安物なのに大事に使う彼の気持ちは嬉しいけど……これから二人を刻む時計は、今の自分が贈りたい。


「貴司……愛してる」


「ん、あぁ……」


額にキスが落とされて……二つの尖りに着いた印をキュッと引かれて腰がくねる。


「どうして欲しい?」


「あっ……セ、セイが……好きなように……」


『愛して』


と、続く言葉は聖一の口に飲み込まれ……深くなってゆく口での愛撫に貴司は心が満たされるのを感じてゆっくり手を伸ばす。


「んっ、ふぅ……」


―――俺も、セイを……。


快楽に、頭の中が白んでゆくが、どうしても彼に伝えたくて……貴司はその背に爪を立て、強く強く抱き締めた。




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あきゅろす。
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