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過去拍手
檻@(いつか、雨が上がったら)
【檻】



「あーあ、オイタし過ぎたね。射矢」


目前に居る支配者は―――整い過ぎた綺麗な顔に、酷薄な笑みを浮かべながら、跪く類の黒い髪の毛を長い指で掴み上げる。


「お前が開発したセキュリティーは世界でも最高レベルだから、解除できる人間なんてそうはいない。海外からも狙われるレベルのプログラマーだとは、悠哉も知らないだろうけどね……まあ、逃げずに残ったのは良い判断だ」


―――いや、彼は馬鹿ではない。きっと、もう既に……。


「本来なら、然るべき措置を取らなきゃならない所だし、お前の無能な親の居場所を無くす事も出来るけど……それ位は覚悟してるって顔してるから、それはしない」


「だってつまんないだろう?」と続いた唯人の言葉に類は内心安堵するけれど、足元を見られたくはないから表情には出さなかった。


「ねぇ、智也ならどうする?どんな罰が相応しい?」


「お前の気が済むようにすれば?」


先程まで叶多が居たベッドの上へと腰を下ろし、そう言葉を返す智也が、どんな表情をしてるのかは分からない。
見る勇気も持てなかったが、呆れたようなその響きからは情など微塵も感じなかった。


小泉叶多を救い出し、射矢自身も二度目に飛ぶヘリコプターへと乗ろうとした時、突如視界に入った姿に心の中で何かが静かに幕を下すのを類は感じた。


―――だけど、後悔は……してない。


「とりあえず、またあっちのシステムに入って貰わなきゃいけないから、頭と手は必要だけど……」


「……っ!」


物騒な言葉を紡ぐ唯人の指に力がこもり、髪を後ろへ強く引かれて正面から視線がぶつかる。


「まさかお前が裏切るとはね……類。長い時間あっちに居すぎて情でも移っちゃったかな?」


「それは……」


「まあいい……お前もその程度だったって事だ。それを計算に入れなかった俺のミスもあるからね。でも、制裁はちゃんと受けてもらう。飼い主に噛みつくような犬には、ちゃんとした躾が必要だから……ね」


「っ!」


唯人には魔が棲んでいるとこれまでもずっと思っていたが、初めて自分へ向いた怒気に、体の芯まで竦み上がった。
美しく……だけどその目は凍てつくように冷たく鋭い。猫科の肉食獣を思わせる獰猛さが彼にはあった。


「智也、抑えろ」


思わず唯人の手を振り払ってドアの方へと駆けだしたのは、本能的な危機感からで、逃げようと思ったからじゃない。


本当は諦観して甘受するするつもりだったのに、初めて感じた圧倒的な威圧感に、堪えられなくなったのだ。




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あきゅろす。
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