三周年記念 12 *** 「俺……最初に、話して欲しかったみたいだ。大学生で、会社作るとか、ホント……セイは凄い。でも、セイが一人で、何でも出来るって……知ってるけど……一緒にっていうなら、最初から……手伝いたかった」 いつでも一緒に居たいという独善的な理由だけで、そんな物を作ったのならそれは違うと貴司は思った。 否、つい先刻まで思っていた。 隠されていた事自体が嫌だったのだと気がついたのは、『どうして』と低く呻いた聖一の表情(かお)を見た時で。 ―――喜んで……誉めて、欲しかった? 本当にそれだけなのだと一瞬にして分かってしまった。 それと同時に自分の気持ちがきちんと形を帯びて来て……どうして気付けなかったのだろうと切ない気持に包まれた。 「俺も、セイも……考え過ぎだ」 首筋を掴んで引き寄せると、整い過ぎた恋人の顔が僅かに紅潮したのが分かり、貴司はその薄い唇にチュッと軽くキスをする。 「ごめん。ずっと貴司の気持ち、無視して来たから、尊重しないといけないって分かってるけど……結局いつも大事な所で失敗する」 「違うよセイ、もう前とは違う。俺は、俺の意思でセイと一緒に居る。だから、もっと……」 『セイは甘えて良いんだ』 そう囁き掛ければ、挿入ったままのペニスが気持ちを表すように、その質量を一層増した。 沢山の理屈を重ね、それでも我慢が利かない位、彼に思われているのなら、嬉しいとさえ思えてしまう自分が貴司の中に居て……何でも出来て、完璧に見えて、だけど不器用な恋人を、出来る限り甘やかしたいと思えて来るから救えない。 ―――だけど。 それでも肩を寄せ合いながら、少しずつでも進んでいると思えるから……だから、今は幸せで、目の前に居る恋人の事が大切で、毎日胸が苦しくなる程愛おしくて堪らない。 「もう、充分……甘えてる。信用も、してる。けど、不安なんだ」 「俺も……だよ」 その不安はきっといつまでも二人の間に付き纏う。 それは恋人同士ならば、程度は問わずあるのだろうが、自分たちの場合はかなり激しい部類に入るだろう。 ―――それは、他人と比べるものじゃない。 「……あっ、セイっ、待っ……まだっ」 突然律動が再開されて、慌てた貴司は制止するけれど、聖一の顔を見詰めていたら、このままでいいと素直に思えた。 「また勃(た)ってる……貴司、もう出す物ないんじゃない?」 「あっ、やっ……そこ、やだっ!」 睾丸を揉みこまれ、痛みに首を振りたくると、胸の尖りに付いたピアスの付け根に舌を這わされて……そこから生まれた疼きに堪らず背中を爪で強く引っ掻く。 「はっ、ああっ……セイ、セイっ」 ジュッっと乳首を吸われたまま、前立腺を何度も突かれ、貴司の身体はベッドの上で魚みたいにビクビク跳ねた。 「やっ……も、出なっ……」 「出るよ。最後の一滴まで……今日は絞りだしてあげるから……だから、貴司……」 『安心して』と囁く声が確かに貴司の耳に入り、極端過ぎる彼の行動に、貴司は少し泣きたいようなそんな気持ちに包まれる。 勿論……悲しいからなんかじゃ無い。 こんなに愛せる相手がいて、愛してくれる相手がいて……伝え方はお互い下手だが幸せ過ぎて怖いほどだ。 「そのかわり、貴司のココ、俺ので一杯にしてあげる」 「あっ……ひっ、セイっ……あぅっ!」 物騒な言葉と同時に掻き回すように胎内(なか)を抉られ、感じてしまった貴司は意識を飛ばしそうになるけれど、尖りのピアスがグイッと引かれて無理矢理覚醒させられた。 「いいよ。沢山……セイで、一杯に……して」 想いがスルリと言葉になる。 「……貴司?」 まさかそんな答えが来るとは思っていなかったのだろう。 聖一が、コクリと唾を飲み込む音が聞こえて来た。 「セイ……好きだ」 いつも言っている言葉だが、それだけが伝われば良いと思ってそう囁くと、 「反則だよ」 と呟いた彼が唇を深く塞いで来た。 その後は……何度も何度も胎内(なか)に出され、射精する物の尽きた貴司のペニスが萎えて勃たなくなっても、激しい彼の行為は止まず、とうとう貴司の意識はプツリと途絶えて闇へ落ちたけど……。 完全に閉じるその寸前……頬へ触れて来る彼の掌や落とされるキスの優しさに……想いが直接流れ込んで、貴司は自分が満たされるのを感じて薄く微笑んだ。 . [*前へ][次へ#] |