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三周年記念
11



「貴司が言ったんだよ?どっちもが良いって」


「あ、あぁっ……セイ、セイっ」


「嫌なら嫌ってちゃんと言わなきゃダメだよ」


「ひっ……あぅぅっ!」


激しく中を穿ちながら耳元でそう囁きかけると、貴司はビクビクと身体を揺らして二回目の射精をした。


「速いね。もしかして溜ってた?」


「……んな……しらなっ」


「やっぱり貴司は少し痛い位の方が感じるね」


「やっ……いっ……痛い……からっ!」


クイッとピアスを引きながら、達したばかりの亀頭に手を置き擦るように刺激をすると、必死に違うと頭を振るが、声に艶が交っているのは隠しようも無くすぐ分かる。


「会社、辞める?」


「やっ……こんなの……ちがっ」


「違わない。本当に嫌なら、本気で抵抗してみなよ。そうしたら……諦める」


本当に嫌な事であれば抗うと彼が言ったのだから、迷って無いならさっき頷いてしまった時点で誤ったのだ。


「あ、あぁっ……セイっ、セイっ!」


悦い所だけを狙うように激しく何度も突き上げながら、乳首に犬歯を立て時……ビクッビクッと身体が揺れて、声にならない悲鳴と共に貴司はまたもや達してしまい、それに構わず深く穿つと爪先が細かく痙攣した。


「凄いね。達きっぱなしだ」


「セイっ……セイっ」


聖一自身は達して無いから、伸縮するアナルを尚も突き上げながらそう囁くと、堪(こら)え切れない涙が貴司の眦から落ち頬を伝う。


名前を何度も紡ぐ唇を優しく塞いで舌で舐め、
「どうして泣くの?」
と問いかけると、貴司は首を左右に振って潤んだ瞳をこちらに向けた。


「……きだ、セイが……好きだ。抱き締め…出来な…から、でも……つたわらなっ」


「貴司はやっぱり優しすぎるよ」


「ちがっ……セイっ、今は、止めっ」


「止めない」


伝わっていると言った所で、拘束している事実からすれば信じてなど貰えない。でもこれを今解いてしまったら、貴司の気持ちを確かめる前に自分が彼に甘えてしまう。


昔の話を出した時点で、心が酷く不安定なのは、もう分かってしまっていたから。


何とも無いと思っていたのに、口に出してしまった途端、恐怖にも似た黒い感情が溢れ出してしまったから。




「貴司、どうして……訳を言ってよ」


なのに。
たった今、冷静に分析したばかりなのに、どういう訳かポロリと口から零れ出てしまった言葉。


放つつもりの全く無かった心の底に仕舞った言葉。


自分の物とは思えない程弱々しいその声の響きに、誰より一番驚いたのは発した聖一自身だった。


「……セイ?」


動きの止まった聖一へと、伺うように視線を向けた貴司もまた、その表情に息を飲む。


聖一自身は気付いていないが、不安げに歪むその表情は、いつもの彼を知っている者には想像出来ない物だった。


「セイ、俺……会社辞める。直ぐじゃ無理だけど、ちゃんとやる事やったら……」


「……無理、しなくていい。俺を……」


「そ……じゃない。無理矢理じゃな…し、セイの事、可哀想だと思っ……からでもない。やっと、分かっ……んだ。なんで苦しかったか……だから」


胎内(なか)を深く穿たれたまま、苦しげに……だけど微笑み懸命に告げて来る恋人に、我に返った聖一が腰を引いてペニスを抜こうとすると、突然背中に何かが触れて、ギュッと強く引き寄せられる。


「……っ、貴……」


「ネクタイ……布が滑るから、頑張ったら、解けた。いいよ、このまま、繋がったままで。その方が……落ち着くから」


背中に回った貴司の爪が、離さないと言わんばかりにグッと立てられて少し痛い。


だけど、その痛みは甘さを帯びて心の中に染み込んで……奥に仕舞った重たい気持ちが、少し軽くなった気がした。



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