銀魂乱舞
8.三日月
一悶着ついた後お腹が満たされたので、まだがやがやとみんなが食事をしている中、食堂裏の中庭に来た。燭台切からここはよく満月が見えると聞いたのだ
来てみると月はあったが三日月だった。そしてそこには先客もいた
「こんな時に人が来るなんて珍しいなぁ」
縁側の真ん中に座布団の上に座っている人。雰囲気を見るところどこか皆と違っているようだ
コチラを振り返ると彼の目は三日月の形に光っているように見えた。だが目に三日月が映るとしても、目の前に月があるのだからそんなことあるはずがない
「…はて?」
「今日来た者です」
「すまないが俺は夜目は使えなくてな。もう少し近くに寄ってくれないか?」
渋々彼の言う通りに近づくがまだ手招きをしてくる。結局彼の目の前でしゃがんだ
「これで見えまっ!」
彼の手は自分の後ろ頭を掴み押されたので相手の鼻先とぶつかる距離まで接近した。彼の目はまた三日月に光っている
なんだこの美形…
「なに」
しらけた顔で見つめ返せば彼は手を離してくれた
「なんだ。驚かんか」
「新人いびりは好かれませんよ」
「…そういうわけじゃないんだが…。まあいい。こんなところへ何をしに来た?涙は引いたか?」
「…見てたのか…」
「あんな大声でおいしい、と連呼されれば離れてても聞こえたぞ。まあ、最初の飯は泣くほどうまいのは知っているがなぁ」
ごほん、と咳払いをすればはっはっは、と笑われる
「貴方は誰だ」
確か、最初初めてここに来た時いたような…
すると姿勢を正して笑った。場の雰囲気も変わった気がする
「俺の名は三日月宗近。まあ、天下五剣の一つにして、一番美しいともいうな。十一世紀の末に生まれた。ようするにまあ、じじいさ」
おっと、最初にいう言葉を喋ってしまった、とまた笑う。第一印象、よく笑う人
「じじいには見えないですがね。どこが老いぼれて?」
「今お主の声は虫の羽の音のようだ」
「え、それは老人」
「嘘だがな」
ズコッとコケてしまう
「まあ前よりも夜目がきかなくなった、ということぐらいか」
そう言って上に昇る三日月を眺める
「皆が月ならば…目が追いやすいのだが」
三日月は悲しそうな顔をしているが、なにか心の奥ウズウズしているものがあって声に出さずにはいられなかった
「それはただの発光体」
「はっはっはっはっ。それは面白いな。そうか、発光体か。なかなか考えたもんだ」
自分がつっこんだら笑ってくれるのはこんなにも嬉しいのか
今度は新八のツッコミに心の中で笑っておこう
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