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【 人間万事塞翁が馬 】
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ちょっと待て。いいか俺、落ち着け、まずは深呼吸だ。

「・・・どういうことでしょうか?」

何とか笑顔は張り付けたままだ。クラス中が固唾をのんで見守る。
・・・いや、後ろで一人だけ、奴は絶対ニヤニヤしてやがるぞ。

「今日の例のアレのせいで俺は後で上からグダグダネチネチ嫌味を言われ続けるハメになるんだ。
・・・いや、そうじゃない。キミみたいな優秀な生徒がいるんだ、クラスの模範になるべきだろう?」

・・・なるほど。本音は前半部分にあるらしい。

チラリと和泉に目をやればしてやったりというような顔をしている。
なんて大人げない奴なんだ和泉!!

俺は聞こえないようにため息をつくと再び和泉に顔を向ける。

「・・・今日のことは本当に申し訳ありませんでした。
せっかくの大役を仰せつかったというのに、無責任な真似をしてしまって
本当に迷惑をかけたと思っています」

和泉がじゃあ、というのを遮って再び俺は続けた。

「なので!そんな無責任なことをした私がクラスを引っ張るということはできません」

和泉がはっとしたような表情を浮かべた。あと一息か?

「・・・そのための名誉挽回のチャンスだと言ったら?」

チッ、そうきやがったか。

「それに・・・学級長というとお仕事が多くて遅くなったりすると聞きます。
クラスメイトの前でこんな話をするのはためらわれますが・・・

先生、私の家庭状況、ご存知でしょう??」

和泉がハッとした表情を浮かべた。
家庭状況も何も、従姉妹である遥香との二人暮らしでお互いの両親は海外という例のあの設定のことだ。
本当のことだけど、まさかこんな所で役に立つとはね。

俺は俯いて唇を噛み、ニヤける顔を何とかごまかした。
(コレがクラスメイトたちの目に、悲しみをこらえている姿に映るだろうことはもちろん理解している)

案の定、クラス中にざわめきが広がる。
家庭状況って?とか。なんか可哀想じゃない?、とか。

よし、ついでにっと。俺は立ち上がって続けた。

「それに、私なんかよりももっと適任な方がいらっしゃるんじゃないですか?
私からですと、そーですね、後ろの瀧廣君なんか適任だと思うんですけど」

ニッコリと笑って告げる。
後ろにチラリと目をやればびっくりした顔の大介がいた。

ニヤニヤ笑ってた罰だ。

「教室に入ってすぐの不安だらけだった私にすぐに声をかけてきてくれましたし。
あ、私人見知りするんですけどね?
先ほどの自己紹介でも皆さん分かったと思いますけど、
彼はとっても明るくて人柄がいいですし、きっとリーダーシップを発揮してくれると思います!」

ね?と再び後ろを向けばひきつった大介は表情を浮かべていた。
自己紹介なんて聞いてなかったんだけどね!

「・・・もちろんクラスのみんなが賛同してくださったらですけど」

どうでしょうか、と言いながら極めつけにちょっと不安げな表情を浮かべてみんなの方へ目を向けた。
よし、みんなも満更じゃあなさそうだ。

和泉がため息をつく。

「・・・いいだろう。みんなもそれでいいな?」

和泉がそう言えば拍手の音が響いた。

「・・・え、俺の意志は?」

後ろから大介の間抜けな声は拍手の音にかき消された。

してやったり。俺はどうやら危機を切り抜けたらしい!

犠牲者はたった一名だ!!良くやった!!尊い犠牲だったぞ大介!!

後ろから感じるじっとりとした視線に気づかないふりをしながら俺は再び席に着いたのだった。


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(じゃあせめて副は歩やれよ!)(そーだなー、そのくらいならできるだろー!)
(ええ、マジで!?)

・・・どうやら回避しきることは難しかったらしい。

(!!!ぬかった!!!)


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