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(side:平村)

あっという間に卒業式はきた。

連日の練習通りに式が進む。

そしてクラスへ戻ると卒業アルバムが配られた。


「俺らのページ最高だなー。流石手島クォリティー。手島すげぇー。」

「俺は?」

「いや〜手島凄いなぁ〜。」

「だから俺は?」

「あ、うん。お疲れ様。」


微妙な反応をすると吉沢に頭を叩かれた。

アルバムには俺と吉沢と手島が三人で映っている写真が貼られていた。

それは金井君の気遣いで北原君が撮ってくれた体育祭の時のものだ。

じっくり写真を見ていると、何だか色んな感情が込み上げてきた。

何故なら、この時と今じゃまるで世界が違う。

吉沢から見える世界が例え同じであったとしても、俺の景色はただの幻想でしかなかった。

だけどこの気持ちも今日で終わる。

後何分…後数時間でお終いだった。

最後の挨拶も終わり、俺達は教室を出た。

皆別れを惜しんでか、至る所で写真撮影をしている。


「俺ら冷めてるよなー。」

「……。」

「聞いてんのか?」


俺は吉沢の言葉に何も言えなかった。

もうお別れだ。

今まで色々あった。

嫌な事も嬉しい事も…全部吉沢が教えてくれた。

だから最後ぐらい笑わないと。

手島が言ったみたいに、嘘を突き通してみせたかった。


「俺、吉沢が好きだよ。」

「っ…。」

「ずっと憧れてた。だから金井君に嫉妬なんてしちゃって馬鹿だよね?」


笑って話す。

後ちょっと、後ちょっとって自分に言い聞かせた。


「金井君に近付いたのはそんな金井君を好きに成りたかったんだ〜。」

「……。」

「吉沢への気持ちが100で金井君への気持ちが0だとするでしょ?そうなるとやっぱり辛いじゃん?だから金井君への気持ちを100にしたら、五分五分になって楽になれると思ったんだ。」

「うん…。」

「それくらい…ずっと吉沢が好きだった。」


こんな持論、綺麗事でしかない。

だけど今は俺が大嫌いな綺麗事に縋りたかった。

もし吉沢の中の俺が少しでも綺麗な存在なら、最後まで綺麗で居たかった。


「ありがとな。俺も平村と仲良くなれて良かった。」

「うん…、」

「平村は意味不明な時もあったけど、やっぱり楽しかったわ。まぁ俺より馬鹿でドジだけどな。」


吉沢は笑ってそう言った。

まだ大丈夫、俺は笑えてる。

だから吉沢も上手く騙されてるんだ…。

あとちょっと、あとちょっとだけの我慢。


「吉沢の方が馬鹿だし…。…金井くん、とこ、行きなよ…、」

「そう言ってるし吉沢行け。平村が本音言ったんだからお前も後悔すんな。」


とうとう限界がきた俺にいち早く気付いた手島が、俺を隠すように目の前に出てきてくれた。

涙が溢れてくる。

せめて泣き声だけは押し殺して、俺はジッと手島の背中を見つめた。


「俺らは冷めてんだろ?だったら何時までもここに居る必要ねぇよ。さっさと行けモテ男。」

「イッテ…!」


手島が吉沢を思い切り叩いたようだった。

パチンと良い音が聞こえて少し笑ってしまう。

こんなノリはいつもと変わらないなぁなんて可笑しかった。




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