04枚目
「平村ファイト!」
小西君が陽気に言ってるけどそれどころじゃない。
吉沢君とツーショットを撮れる日がくるなんて夢にも思わなかった。
笑っていいの?
いや…笑わないといけないんだよね。
笑わないと…。
「俺も入りたいなー。」
平村君を見ると不満気に僕達を見てそう言った。
「…平村はリベンジするんだろ。俺らの事笑わせろよ。」
隣からそんな声が聞こえてきて…更に緊張した。
どうみてもツーショットだ。
「………金井君、吉沢の顔見て。」
「え?」
何を言われるのかドキドキしてたけど…本気で予測がつかない。
とりあえず言われた通りに吉沢君の顔を見る。
自然と目が合って、その近さに顔が熱くなった。
「そのままチューして。」
─ バッ
ビックリした!
僕は急いで目を逸らした。
な、なんて要求を…!
チューしてとか…正気なの…!?
「アハハ〜吉沢振られちゃったねぇ。まさかあんなに嫌がるなんてっ…アハハ!」
「ぁ、ちがっ…」
「テメェ…俺らで遊ぶな!」
「アハハ!」
平村君に釣られたのか北原君や小西君も笑い出した。
笑い声に包まれて急激に体温が下がる。
周りを見渡して…ここが教室で今は文化祭なんだと当たり前の事を考えた。
「金井君ごめんね〜。冗談きつかったよね〜。」
尚も可笑しそうに笑いながら話し掛けられる。
何で笑ってるの?
怒りも悲しみもなく淡々と思った。
「ビックリしただけ。僕も過剰に反応しすぎたかな?」
「ちょー嫌そうで笑ったわ〜。まぁ2人共笑わなくても絵になるしコニタン適当に撮っちゃえばー?」
「だから投げやりになるなよ!」
他人事みたいに周りの会話が聞こえてくる。
笑わなくて良いならそうして欲しい。
本当なら幸せだと思える瞬間なのに…惨めだった。
「いや、もう既にスッゲェ良いの撮れたぜ!ほら見てみ?マジでキスする五秒前みたいな!」
「うわ…ヤベェ。これ卒アルの表紙にしね?」
小西君と北原君がカメラを覗いてそう言い出した。
僕も中身が気になって覗きに行くと、僕と吉沢君が見つめ合っている写真が映っていた。
「け、消して!」
いつの間に撮ったんですか!
初めてのツーショットがこれって普通に恥ずかしい!
「いや〜確かに絵になるね〜。映画のチラシみたいだぁ。…にしても金井君嫌がりすぎー。」
「…嫌とかじゃなくて恥ずかしいんだよ。」
「小西カメラ返して。うわ…、マジか…。」
吉沢君は写真を見ると、口に手を当てて固まってしまった。
「そんなに嫌なら俺消そうかぁ〜?」
「いや、これも思い出の一つだし置いとく。」
「でも金井君が恥ずかしいから消してってさ〜。」
「…金井。保存したままで良い?悪用しないし、卒アルにも載せないし。」
吉沢君に見つめられる。
そんな事を言われたら嫌って言えない。
それに僕だって恥ずかしい半面、何だか嬉しいし…。
「…うん。」
僕は恥ずかしさで俯きながら返事をした。
「ありがとな。」
「…うん。」
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