05枚目
(side:吉沢)
無理矢理頷かせてしまった事に多少の罪悪感を抱きつつ、手に力を入れた。
ガッツポーズしたいが今は出来ない。
いつもアホみたいに騒がしい小西にしては珍しく気の効いた事をしてくれた。
まさか金井とツーショットを撮れる日が来るなんてな。
これはクラスメートを撮りまくる俺へのご褒美なのか。
もう一度画面を見れば俺と金井が見つめ合っていた。
桁違いに綺麗な金井の横顔は見ているだけで口元が緩む。
駄目だ、我慢しろ。
思わずにやけそうな頬を引き締めて、俺はカメラをソッとしまった。
他にもピンで沢山撮ったし後でゆっくり見よう。
「金井ありがとな。ついでに小西も。」
「え?俺ついでなの?」
「平村行くぞ。」
「え?無視なの!」
小西を軽く無視して平村と教室を出る。
それにしても金井…。
すっっげぇ綺麗だったな。
あんな至近距離で並べただけでも凄いのに、バッチリ目が合ってしまった。
ほんと透き通った瞳で夢みたいだった。
アホみたいだけど3Dと言うか…居るのに居ないと言うか…卒アル委員になって本気で良かった。
「吉沢〜。」
「……。」
「…ざわさん、俺寂しい。」
「ッ…きっしょ。」
「ひどーい!」
平村に呼ばれている事に気付かなかったらしい。
絡ませるように腕を組まれてようやく気が付いた。
「ピトッ。」
やめろやめろ。
きしょい。
…コイツのくっつき癖治んねーかな。
「離れろ。」
「え〜ようやく2人っきりになれたのに〜?」
「妙な言い方すんな!」
「嬉しい癖に〜。」
「だ、れ、が!」
うぜぇノリだな!
まぁ慣れたし何だかんだで楽しいから良いけどさ。
「…文化祭デートって萌える〜。ほぉら、恋人繋ぎ。」
「ッ…!キモいわ!」
今度は恋人繋ぎをしてきた平村の手を剥がそうと必死になる。
力つえぇーな!
「アハハ!照れ屋さん!」
「照れてねぇ!離せ!」
その後もふざけまくる平村との攻防戦が続き…。
段々と落ち着きを取り戻しつつ、2人で適当に回った。
ちなみに手島は外部から友達が来ているので当番で合流する予定だ。
「吉沢はたこ焼き〜。」
「おー。」
平村に引っ張られてたこ焼きの出店に並ぶ。
俺はたこ焼きじゃねぇよ、と内心突っ込んだが流石に疲れたので大人しく従った。
「これが最後の学祭かぁー。寂しいなー。」
「どうしたよ、急に汐らしくなって。」
「んーなんとなく?」
確かに…これが最後だと思うと考え深いな。
ベンチでたこ焼きを頬張りながら周りを見渡す。
この毎年見てきた当たり前の光景も見納めか。
「あ、タコ落ちた。」
「……拾えよ。」
「ティッシュないやー。」
「……。」
人がしみじみとしてる時にコイツは…。
仕方がなしに平村に落とされた可哀想なタコを拾って近くのゴミ袋へ捨てに行った。
「吉沢ありがと〜。優しすぎて惚れちゃうね。」
「へいへい。」
最早突っ込むのも面倒だ。
「吉沢〜。」
「んー?」
「俺と居て楽しい?」
「まぁまぁだな。」
「ひっど!俺はスゲェ楽しいのに!」
エーンとビックリするぐらい下手な泣き真似を始める。
やめろ、今度は丸ごと落とすぞ。
「俺もたのしーたのしー。」
「わぁ、嘘っぽい。」
「…泣いてたんじゃなかったのか。」
「エーンエーン。」
「お前のが嘘っぽいわ。」
ペチッと平村の頭を叩く。
手島ほど強く叩いてないのは俺の優しさだ。
感謝しろよ。
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