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なくしたくないもの


「ふぅー」


少年は杖を片手で持ち、後ろにずっと立ったままでいた見た目青年の男に向き直ろうとして、


「うわっ!」

「!危ない」


足元がふらつき転けそうになったところを後ろにいた青年が駆け寄り、体を支えた。
青年は安堵の息を漏らし、少年を立たせた。


「あはははは、ありがとう」


お礼を言いながら立つ少年の顔色はさっきまでとは違い、青かった。

少年を支えている青年は、心配そうに少年を見ていた。


「お前・・・加減しろって何回言えば分かるんだ」


心配そうな表情と違って、呆れたような言い方。しかしその声色には怒気が含んでいた。


「加減なんてしてたらこの星終わっちゃうじゃん」

「人間の身勝手のせいだろ。俺らなら違う星でも生きていける」


当たり前のように言った少年に、青年は声を荒げて反論した。





「いや、俺らなら荒れ果てたこの星でも生きていけるだろ。・・・・・・俺らは、人間じゃないんだから」


怒気が含んでいた声は、悲痛な呟きと変わった。



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