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blood

「終わっちゃった、ね」
「そうだな」

「また、静かになるね」
「…そうだな」

二人で持つには少し量の多い荷物を抱えて少年と少女は歩く。
宿へと続く一本道は旅人からすると風情なのかもしれないが、自分達からすれば世界から追い出されてしまうようで。
緩やかな坂道は何かを拒んでいる気がしてならない。

感情か。現状か。
分からないけれど。



陽が半分顔を隠したくらいに二人はそこに着くと少女の方がふさがった両手を片方開けてそろりとドアノブに手を掛ける。
ゆっくりと開けたドアの先には見慣れた筈の風景に哀愁が溶け合わさった世界があった。

昨日までは聞こえていた出迎えの挨拶も、思わず叱りたくなる喧しい声も、
今日は聞こえない。

聴覚がおかしいと疑うには、心が冷静すぎた。


「……、」

分かるか分からないくらいかに吐いたため息に気付かれぬように、少女は再度荷物を両手で抱えようとした、
刹那。

「…ライ?」

荷物を支えようとした少女の右手が感じ取ったのは、ごわついた紙袋の感触ではなく。

「どうしたの?ライ?」

暖かい、半身の温もり。
「ライ?」
己を呼ぶ声に思わず握った手に力が入る。

「…おかえり、フェア」
「……」
「おかえり…」

真っ直ぐ少女を見つめる少年の手は、心地よい力を込めたまま。
当たり前が当たり前でなかった言葉を落として。

握る手を引き寄せて、愛しい自分を抱き寄せた。

「…大丈夫だよね、わたし達、ずっといっしょだったもんね」
「うん…そうだろ、オレ達は…ずっといっしょだ、って」

手にしていた紙袋の中の果実は無造作に床に転がる。
それさえも愛おしいこの感情に、心が忘れてしまった感情を呼び起こす。

「オレはどこにも行かない、お前がどこかに行ってしまっても…、オレはどこにも行かないから」
「それは違うよライ…、わたしは自分を置いてったりなんかしない」


決してキレイとは言い難い手を握り合って、
互いに互いの身体の体温を感じ合って、

そうだ、僕らは。

「わたしは、ライ」
「…オレは、フェア」


兄弟でも、親友でも、恋人でもない。

僕たちは、


血なんだと。










blood
(血の絆<イト>だけは 何があっても解けないから)





本編後ライフェ

相思相愛、家族とか恋人を越えて血なんです。
二人とも病みすぎ…!

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