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掲げ、捧げよ

思春期、そう呼ばれる頃合いに双子と言えど姉弟で同じ部屋だなんて珍しいわね、と以前リシェルに言われた事がある。
そういうもんなのか?気にした事ねぇけど、とか言って誤魔化したが本当のところはオレもそれは思ってたりする。
男のオレならまだしも女であるフェアが不満一つ口にしないのは不思議だと思う。
部屋はいくらでも余ってるのだから移動しようと思えばいつだって移動できるのに。

まあオレにとっては嬉しい事ではあるのだけれども。


「え、部屋…?」
「あ、あぁ…別に客室じゃない部屋も余ってるし、さ」

遠慮がちに、フェアの為だと思って言った言葉に当のフェアは苦味を交えた笑いを零す。
決して嫌なわけじゃない、フェアとずっと一緒にいられるのはオレだって嬉しくない筈はない。
ただ、もう15になったというのにオレがいたってフェアは何も気にとめる事無く着替えを行ったりするものだから気が気じゃない。

「…ライは、わたしと一緒じゃ嫌、かな」
「え、あ、いやそーゆー事じゃないんだ!何つーかさ、その…」

言葉にしていいものか口籠もるオレにフェアはゆっくりと視線を外す。

「ねぇライ、覚えてる…?」
「…?」

フェアが覚えてる事でオレが覚えてない事はない、と思ったが口には出さずフェアの言葉を待った。
フェアは二段あるベッドの下段フェアのベッド、今現在はフェアとコーラルが寝ている場所にゆるりと自分の手を這わす。
思わずキレイだと出てしまいそうになった言葉は空気と一緒に飲み込んだ。

「父さんが出てった日の夜の事」
「…忘れるわけねえだろ」

そう、忘れる筈がない、初めて過ごす二人だけの夜。
怖くて怖くて仕方がなくて、このまま闇に溶けてしまうのではないかと、怯えて。
少し耳を澄ましたら、小さな啜り声が聞こえてきて、慰めるつもりで下で小さく丸まっている姉のベッドへと降りた。

本当は、自分自身が怖くて、愛しい半身を求めて降りたのを理解したのはつい最近。

「このベッドで、二人、朝が来るまで抱き合って、…泣いたよな」
「…うん、ずっと、二人で」
「フェアが、オレの手握ってくれてさ、」
「はは、覚えてたんだ」
「当たり前だろ」

あの時、子供ながらに交わした約束をその時からからずっと編み続けてた。
慣れない手付きで、でも一つ一つ丁寧に、心を込めて。

「わたしの部屋はね、ライがいないとわたしの部屋じゃないの」
「……フェア」
「泣けるのも、弱音を吐けるのも、落ち着くところも、」

オレより少し小柄なフェアの身体が、オレの身体との距離を縮めた。
視界に銀、嗅覚に懐、胸に暖。

「全部、ライの中だけだもん…」


――ずっと、いっしょだよ



放り投げた誓いを見つけた。
それが自然な事だよと、誰かが言ってたふたりだけの約束。

幼い頃、ふたりで懸命に編んだふたりの何か。
忘れてしまったのは罪じゃないけれど、それでも、

もう一度手に取って、

「大好きだ、フェア」
「知ってるよ、ライ」










掲げ、捧げよ
(君への、想い)








ライフェ

もう互いが互いしか見てない。
ほんとライフェがすきすぎてヤバイです…!

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あきゅろす。
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