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しょーと
彼岸越しの恋(幸政/死ネタ注意)

※しねた若干病み?注意









「まさむねどの、」





「まさむねどの、」






























彼岸越しの恋






























其の報せが訪れたのは、漸く己の中の混沌から抜け出した辺りだった。

『独眼竜が、討たれた』

浸って居た安堵と束の間の平穏の中、其れだけの言葉が、酷く己の中に響いた。

何時も隣で己を護ってくれて居た忍が息を呑む音を、確かに聞いた。





「今、何と」

「独眼竜が、…伊達政宗が、討たれた、と」

「もう一度言え。今、何と言った」

「独眼竜が…討たれ、ました」

「…もう一度、言ってみろ」

「真田の旦那…いや、真田の大将。何回聞いても、同じだよ」





今にも伝令を突き刺してしまいそうな激情に、怯えた声が聞こえた。

…だって、今、何と。





「あの方がそう簡単に討たれるか、佐助」

「真田の大将」

「あの気高い竜が、そう何度も地に落ちるものか」

「…大将、」

「あの方が…あの人が、某以外の誰かにそう簡単に、討たれるものか」

「大将」

「片倉殿も優秀な臣下も居るあの人の軍が、崩れる訳がない。そんな報せは、」

「ッ旦那!」





信じられない。信じない。信じたくない。

どうして、何故。あの方が討たれただと。





「巫山戯(ふざけ)るな」

「旦那…」

「だって、有り得る訳が無いだろう…あの、独眼竜が、」

「…うん」

「つい先日…決着を楽しみに待つと、待っていると、文を頂いたばかりなのに、」

「うん」

「つい、先日っ…」





声が、震えた。

視界が、滲んだ。

信じられない。

あの方が、死んだ、なんて。





「佐助」

「…うん、」




信じられない、だから───。

声と共に消えた忍も、きっと。

同じ想いだった。










「…佐助」

「旦那」

「………すまぬ」

「旦那」

「…ああ」





只、己を呼び続ける声に、持っていた筆を硯へ落とす。

白紙に近い紙に飛び散った黒を、まるで戦場の紅の様だと目を細めた。





「…不思議だな」

「…うん」

「報せを訊いた時は、涙が出た。声が、震えた。信じられなかったし、信じたくはなかった。確かに、哀しかったし怖かった」

「………うん」

「だが、今は…不思議と、涙も出ぬし声も震えぬ。哀しいとも、怖いとも思わぬ…只、良く分からぬ感情だけが、在る」

「…うん」

「まだ、まだ…某は信じられぬし、信じたくはないのに…頭では、解ってしまっている」

「…うん」

「………佐助」

「…何?大将」

「…只の好敵手である某が、政宗殿の弔い合戦をするのは、可笑しな事であろうか…」





俯いた視線に、硯の中の墨に映った酷く感情の無い己の顔が見える。

映る己からは何の感情も読み取れない。





「…大将…いや、旦那は…竜の旦那を、どう思ってたの?」

「…?どう、とは」

「俺は、さ。右目の旦那…片倉さんが、好きだよ」

「………」

「実は、さ。結構前から密かに会ったりもしてたんだ。黙ってて、ごめん」

「構わぬ。同盟も結んでおらぬ軍の将と、等言えぬであろう。其れに…前から、知っておる」





暫くの沈黙の聞こえてきた苦笑に、釣られる様に笑った。

ひくりと震えた喉が、引きつった笑いを引き起こす。





「ま…だからさ。俺様は…あの人を討った奴を、許せない。許さない。好きだったから。大切だったから。あの人を殺すのは俺で、俺様を殺すのはあの人で、ずっとそんな危うい関係を夢見てたから」

「………そうか」

「だからさ。俺様は、弔い合戦…違う…俺様にとっては復讐。其れを俺様がするのは、可笑しい事じゃない」

「………」

「旦那はどう?竜の旦那の事、」

「お慕いしている」





遮った己の言葉に、嗚呼、と嘆息した。

嗚呼、何て愚かなのだと。





「お慕い、している」

「…うん」

「お慕い、しているのだ」





鼓膜を揺らした己の声が、まるで他人の物の様だった。

其れを聞いた忍は、風を揺らして其の場から消えていた。

後に残った己の声の余韻が、静かに闇に溶けていった。










「…酷く、長い夢だった」





霞む視界に映る天井と少しの青空に、酷く倦怠感を感じて身体の力を抜いた。





「佐助は…きっと、片倉殿と一緒だろうな」





ばたばたと騒がしく地面を揺らす振動が、少しずつ意識をも揺らして行く。





「佐助…片倉殿と、仲良くしておれよ」





折角、彼岸越しの恋から解放されたのだから。

緩慢に呼吸を繰り返す毎に、身体が床に沈んでいく。

…嗚呼、そろそろ逝くのだろうか。





「…長かった」





蒼を失ってからの夢は。





「長かった…」





色を失った世界の夢は。





「…まさむねどの、」





魂を揺さ振る存在が居ない世界は、酷くくすんだ色をしていた。

交わる事の無い蒼が消えた世界は、酷くゆっくりと時間が流れた。

彼岸越しの恋は、酷く辛い物だった。





























「まさむねどの、」





「まさむねどの、」








































「お慕いしております」








































消え逝く紅が最後に零した告白は、消えた蒼への最後の彼岸越しの告白だった。




























「まさむねどの、」





「まさむねどの、」






























彼岸越しの恋




















*あとがき*

病み状態の一発書きで15分〜20分のものでした(´`)

しょーとに行く程じゃないかなと思ったのでこっちに。

3の幸村のストーリー派生で政宗が全然関係無しのまま潰された時があったもので(確か)←

殴り書きだから何も考えてなかったので凄く簡単に書けましたww←

もっと時間掛けて書けば良かったなぁとか今更に思います(笑)

2010.9.24 白黒

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あきゅろす。
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