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しょーと
Thanks,my friend.(佐+政)



友達なのかと問われたら恐らく頷くだろう。

けれど、仲が良いのかと問われたら───?





Thanks,my friend.





彼は、高校に入ってからの友人だった。
名前と顔だけなら、高校に入る前から知っていた。
俺が進学した高校には同じ中学出身が彼と俺しか居らず、話す程仲の良い友人等以ての他。
そんな時に偶々只一人の同中学校出身の彼が同じクラスになった。



『アンタ、確か同じ中学だったよね?』



未だぎこちない空気の教室で、彼が話し掛けて来たのが最初だった。



『Ah…アンタ、有名だったよな』
『そう?アンタも中々だったけど』



良かったら一緒に帰らない?
くすりと溢れた笑みに笑い返して、かたんと音をたて椅子から離れた。



「佐助」



担任に呼ばれて暫く待たせてしまった彼を、呼ぶ。
教科書やらノートやらをロッカーに突っ込んだり鞄に突っ込んだりして居た彼が、帰ろっかと呟いた。



「Ahー…疲れた」
「呼び出し、進路の事?」
「Yes.そろそろ危機感を抱けとさ」
「政宗、進路も何も文理さえ決めて無いからね」



一年半前と違わない笑顔でくすりと笑んだ彼に、何も言わずに歩を進める。



「行きたい大学とか、専門とか、無いの?」
「…分からねぇ。自分が何をしたいのか」
「そんなもんじゃない?俺様だって遣りたい事が有るから大学行くんじゃ無いし」
「佐助はどうやって志望校決めたんだよ?」
「どうやって、って。地元で、国立で、理系の大学を探したら志望校になったってだけ」



皆そんなもんだよ、多分。
呟いた彼の声に、適当だなと特に思っても居ない事を口にする。



「…俺も、どっか適当に決めるかな…」
「政宗、県外行くの?」
「分からねぇ。けど、実家は出る」
「ふーん、そう」



興味が有るのか無いのか曖昧に頷いた佐助に其れ以上言葉を重ねる事もせず、訪れた沈黙に携帯を取り出しメールの確認をする。
近過ぎず、遠過ぎずの距離で、同じ速さで同じ道を歩く。



「あぁ、そう言えば政宗、バイト土曜入ってたよ」
「Really?Thanks.」
「日曜は無かったと思うけど」
「佐助は入って無いんだったか」
「俺様、土曜はカラオケ入ってるからキャンセルした。日曜は入ってるけど」
「Hum…okay.」



最後にもう一度Thanksと礼を言ってから、再度訪れた沈黙に何も言わずに足を動かす。

彼と初めて話した一年半前から、俺達は何時もこんな感じだった。
他の奴が相手だとこうも沈黙は存在しないし、存在させようともしない。俺はどちらかと言えば口数の多い方で、其れは彼もだった。
只、彼と俺とで二人きりになると、何時もこんな感じになる。

彼と初めて話してから今迄、彼と俺は一度も休日に会った事は無い。否、会った事は無いと言えば語弊になる。休日に一緒に何処かへ行った事が無い。
映画や買い物、カラオケも休日に彼とは一度も行った事が無い。

別に、彼と俺が休日何処にも行かないとか、毎日バイトを入れているとかでは無い。けれど、彼と俺とでは行かない。行こうと謂う話が出た事も無い。



『政宗と佐助ってさぁ、仲良いの?』



高校に入ってから知り合った友人の慶次に問われた事が有る。何度も。
一度目の問いは彼が居ない時に言われた物で、其の時俺は暫く黙った後に普通だと答えた。
二度目の問いは彼が居た時に言われた物で、其の時俺達は顔を見合わせてから、微妙な顔をした。
三度目の問いは矢張り彼が居た時に言われた物で、やっぱり俺達は微妙な顔で黙ったままだった。

多分、未だ何度か問われたと思う。けれど、俺達の反応は、大して変わらない物であった筈だ。



「電車、次何分かな」
「知らねぇ」



ぽつりと聞こえた彼の声に簡潔な答えを返し、そうとだけ返した彼の隣を歩く。

手を少し動かせば触れられる距離。
動かさなければ触れられない距離。

此の沈黙を、一度だって煩わしいと思った事は無い。
此の距離を、一度だってもどかしいと思った事は無い。



「あ、今行ったみたい」
「Ahー…」



駅から出て行った電車。
其れに反射した光と同時に吹いた突風に、反射的に目を瞑る。



「…仕方ねぇ、な」
「うん」



目を開いた先に在るのは、何時もと変わらない彼と俺の距離。



「なぁ、佐助」
「ん?」



呼び掛ける声に応えるのは、何時もと変わらない彼の低い声。



「佐助の行く大学って、どんな大学だ?」



此の不確かな距離は、きっと一生変わらない物なんだろう。

近過ぎず、遠過ぎず。

程良い距離を、保ったまま。



「志望校、同じにするの?」
「駄目か」
「良いんじゃない?知り合いが居た方が、俺様だって心強いし」
「じゃあ良いか」
「うん。あーあ、ライバル増えたなぁ」
「良いのか悪いのかどっちだよ」
「個人的には良い、統計的には悪いってとこじゃない?」
「余計分からなくなった」



何が面白いのかくすくすと笑い続けて居る彼に一つ睨みを利かせれば、怖い怖いと首をすくめられる。



「ま、俺様は嬉しいよ」
「Ha!そうかよ」
「ごめんって。拗ねないでよ」
「拗ねてねぇ」



鼻で笑う俺に浴びせられた見当違いにも程が有る彼の科白に外方を向けば、更に面白そうに繰り返される彼の笑い声。
ああくそ此れじゃ本当に拗ねている様だ、と其の彼の笑う声により気付かされる。



「嬉しいよ、兎に角」
「Ah、そうかよ」
「だから、まぁ、大学行っても宜しくね。政宗」
「Ha、仕方ねぇな…okay,付き合って遣るよ」



変わらなくて良い。

絶えず変わって行く世界の中で、変わらない物が少し位在った方が良い。

絶えず変わって行く人の中で、変わらない距離が在ったって良いじゃないか。

此の曖昧で不確かな距離は、此の先一生変わる事の無い、俺達にとっての最短距離だから。



「Thanks,my friend.」



変わらない俺の友達で居てくれて!





hanks,y riend.

(bestじゃなくて、better)





*あとがき*

最近文が書けなくなったのでリハビリがてらに。

ここ最近欝だったのでお友達に助けられてばかりなのでやたら政宗にThanksと言わせてみました←

こんな風に何年後も変わらない友人関係があると嬉しいなと思います。

…将来不安になってきました^q^wwww←

にしても佐助と政宗書きやすいな←

2010.10.21 白黒

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