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世界の平和は甘い物を食べる事から始まるのだ
救われたい気持ちと救われちゃいけない現実
















あれから何時間たっただろうか。
光もささないこの部屋では、朝か夜かもわからない。
ただわかること。
それは結婚を承諾した今でも外には出して貰えないということだ。
きっと逃げると思われているのだろう。まぁ出た時点で逃げ……たい。だけど逃げる訳にはいかなかったんだっけ。

ふと、はだけさせられた格好のままの自分に気付き、今さら恥ずかしくなってきた。
だけど手も足も動かせない状況にいる自分が腹立たしかった。


『お腹…減ったなぁ。』


声を発すると、体がひしひしと痛んだ。あれだけ殴る蹴るを繰り返されたらきっと全身痣だらけだろう。
唇を舐めると、鉄の味がした。…血の味だった。
大きなため息が出た


『………みんなに会いたいよ…』


そして私はまた眠りについた





******





「あなた方が新人の女中ですか?」

「はい」「そうです」


着物が苦しい。
内股。
歩くのが疲れる。
女ってのはいつもこんな感じなのか…と実感した。そう。さっき見つからなかった俺と土方の2人は女中として屋敷に潜入したのだった。
いつもならこんなのは密偵の山崎の仕事な訳だが、華絡みの今回のことはそんなわけにも行かない。

そんなことを考えていると、俺達の案内をしているベテランらしき女中が話しかけてきた。


「緊張していませんか?」

「大丈夫でさァ…てっ」
「大丈夫ですわオホホ…」


土方の野郎にいきなり叩かれたと思うと、コソコソと耳打ちしてきた


総悟!言葉遣いに気を付けろよ。もしバレたら俺達だけじゃなく真選組全員切腹ものなんだかんな
わかってまさァ


するといつのまにやら部屋についたらしく、女中は足を止めた


「お二方には姫様のお世話をしてもらいます。本来ならば私達がおやりするのですが、今回は将軍様がどうしても新人をと申しますので。」

「そうなんですか…」

「くれぐれも、姫様に危害を加えぬ様に。」


そういうと、ベテラン女中は櫛や手ぬぐいなど世話をするための物を置いて戻っていった。
そして部屋の前には俺達2人だけになった


「………開けますゼ」
「…あぁ」


障子を開けると、真っ白な布がカーテンの様に天井から5枚程重ねられ吊るされていた。
よほど外との接触を避けたいのだろう。
布を一枚一枚めくっていくと、ようやく中に辿り着いた。

そこには、真っ赤な服の金髪の女…そう、華がいた。


「…───っ!」


見ると華は手足に手錠を掛けられ、着物ははだけ、体は傷だらけだった。
それをみた俺は一気に体が熱くなった。
華をこんなことにしたアイツをいますぐにでも殴りたかった。


「華……?」


名前を呼んでもピクリとも反応しない華は死んでいるのではないかと思う程だった。
俺のせいで…俺があの時万事屋まで送っていれば………
俺は見ていられなくなり華に駆け寄った。


「華!!!起きて下せェ!!!」

『ん………?』

声を掛けるとどうやら目を覚ましたらしく、俺を見た。が、だれだかわからないらしい。まぁ女装してるしな。
俺はギュッと華を抱きしめた。


「総悟でさァ。…すいやせん、すいやせん華!俺…俺のせいで…」
『沖田く…痛っ』
「大丈夫ですかィ!?!?!?」


俺は華を離しお世話セットに入っていたはずの救急箱を取りに行こうとした。するとすでに土方が用意をしていた。


「コレ貼ってやれ」
「………わかりやした」


華に湿布を貼ったり包帯を巻いたりしていると、ようやく状況を理解したらしく華が話しだした


『…沖田くん、土方さん………どうして?』

「そりゃ、華を助けるために決まってんだろ。」
「こんな恥ずかしい格好までして、来たんですゼ」

『ありがとう………でもね、ダメなの。私、結婚する事にしたから。』

「「…は」」


華は笑いながら話していたが、作り笑いだということがすぐ分かった。そんなたかが1日で結婚を決めるなんておかしい。何か裏があるに違いない。


「嘘はやめて下せェ」
『嘘じゃない…よ?あのね、将軍様…優しいし』
「こんなことするやつが優しいって言うんですかィ」
『!……結婚したら、お金いっぱいくれるんだって!あはは』
「…金には興味ねェくせに。バレバレな嘘吐きやがりまさァ。」
「総悟…」


そういうと華はポロポロと涙を零した。


「!…すいやせん。言い過ぎやした」

『私が結婚すれば、みんな幸せになれるの!!!だからっ…っ。』
「どうい」


理由を言いかけた華に解いただそうとすると、いきなり障子が開いた。


「華、調子はどうだ」
『将軍様………』

「新しく姫様のお世話をする事になりました、トシと申します。こちらがソウです。」
「…」


俺はおとなしく頭を下げた。こんな所でばれてしまったら来た意味がなくなってしまう。
そしてゆっくり頭を上げると、将軍の顔が目に入った。
………違う。
俺はそう感じた。今までの将軍とはまるで違うのだ。そう、鬼の様な…


「…風呂にでも入れてやれ。それから婚約の日取りは5日後に決まった」
「……かしこまりました。」『はい』


それを告げると将軍は帰っていった。


「おい土方。気付きやしたか?」
「あぁ。あいつ…将軍様じゃあねぇな」
「ってこたァ、華を救う糸口が見つかったって事かィ」
「…とりあえずは調査だ。」


そう土方は言って、華の方へ行った。
俺はどんな理由があったとしても華を連れて帰ると決意した。
だって華は、帰りたいって顔をしてたから


「さぁ姫様!お風呂へ行きましょうか。」
『はい、トシさんっ』
「それで呼ぶのかい」
『うん!ほらそーちゃんも行こう!』
「…はいはい、わかりやしたよ」





*****





「銀ちゃーん」
「何」
「どうするネー」
「うーん、ゴリラどうするよ」
「とりあえず周り巡るか」

「このやり取り何回すんですか」


見つかった組の僕達4人は、あれからずっと屋敷の周りをうろうろしていた。
どうしたらいいかわからないまま陽が落ちようとしていた


『へーっ!お風呂広い!』

「「「「!」」」」
「…今声しましたよね?」
「あぁ…華の」
「ちょうどこの壁の向こうみたいだな」
「ちょっと行ってみようヨ!」
「え!?また見つかったらどうするの!?」
「大丈夫ネ。すぐ戻るアル」
「でも…」
「…あーじゃあ俺と神楽で行ってくるからオメーら待ってろよ、わかったか?」
「うーん、わかったぞ」
「わかりました」


そういうと銀さんと神楽ちゃんは壁と飛び越えて行った。
無事に華ちゃんと会えますように。
あわよくば連れて帰って来てくれればいいのになんて思った。

ふと気付けば近藤さんと2人きり。


「…どうします?」
「………ね」





*****





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あきゅろす。
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