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世界の平和は甘い物を食べる事から始まるのだ
愛は時に一方通行で
















「華殿、結婚してくれ」
『ごめんなさい』


あの日から、何日このやり取りが続いただろう。
将軍様が高そうな手土産をたくさん持って毎日万事屋にくる。
ハッキリ言って本当に婚約なんてできないのに。

そして今日も将軍様は帰って言った。


「…帰ったか?」
「…帰りましたね」
『疲れたぁぁぁぁぁぁ…』
「まったく!なんでワタシじゃなくて華ネ!?ワタシの方がイイ女アル」
『本当!なんで私なんだろう…』
「それはなぁ…」


かわいいからだよ、なんて言えなかった。
でもなぜなんだろうか。ケーキがうまかったからか?…いや、それだけとは考え難い


「なんか、前に将軍に会ったりしなかったか?」
『うーん…』


私は一生懸命記憶を逆上った。
ちょんまげの…キレイな袴の………?


『んん?あれかな?』
「心当たりあるの!?」
『心当たりってほどじゃないけどね、この間買い物の帰りに、人とぶつかったの』
「それで?」
『相手の人倒れちゃって、手擦りむいたの。それ消毒してあげたって感じなんだけど…その人めっちゃハゲてたなって』
「ちょー!!!キツい!キツいよ華ちゃんー!?」
「そんとき他には?」
『あーと…私が「国を護るお侍さんなんだからケガはしないように気を付けて下さいね」って言ったら「余は平和な国を作りたい」って言って「ステキな夢ですね、応援します」って言った』
「「「それだーーーっ!!!」」」
「つか最後の方話すのめんどくさくなっただろ!」
『ごめんごめん…でもそれなのかな?』
「そうだろ〜。侍にとって夢応援されるのは一番胸キュンよ!?あと怪我の治療もポイント高いね!」
「何の話ししてんですか…」


それよりも、と銀ちゃんが言った


「華が心配だな。」
『?どうして?』
「だってよぉ、今もストーカー紛いの事されてんだぞ?路地裏に連れ込んで〜ってのもあるかも知れねぇじゃねーか」
『考え過ぎでしょ〜!』
「確かに真選組のゴリラとは違って将軍にはストーカー行為を手伝う奴いっぱいいるし、なにされるかわからないネ」
「性格悪そうだしね…」『そうかな…』
「「「そうなの!!!」」」


みんながそういうからそんな気がしてきた。
なんだか怖い…でも、本当にあれだけで結婚したいって、思うのかな?


「とにかく、しばらくは一人で出歩かないこと!」
『は〜い…』





*****





それから数日。
未だに将軍様は万事屋に来ていた。将軍様が帰ってから仕事に向かう、の繰り返し。だんだん疲れがでてきた。
それでもそんなことを言っている暇もなく、仕事に向かわなくてはいけない。
そして、今は落とし物探しの依頼を受けているところだ


「あったか〜?」
『ないーっ』


人込みの中に大事な手紙を落としたという依頼だが…こんなに人がいる中で手紙が見つかる気がしなかった。
注意して足元を見ていると、後ろから肩を叩かれた。


『は………、将軍様』
「華殿、仕事か?」
『はい…』


その人は事もあろうに将軍様だった(こんな時に!)
後ろで手紙を探しているはずのみんなを見たが、人込みに紛れていてわからなかった。


「華殿は何の為に万事屋におるのだ。余の城に来れば欲しい物は何でも与えてやろうに」
『いや、あの』
「行こう」


そう言って手を掴まれ引っ張られた。怖かった。
あの時銀ちゃんが手を握ってくれたのとは全然違い、本当に身の危険を感じた。
すると後ろから神楽ちゃんの声が聞こえた。


「見つけたアルーっ!!」
「おーよかった。んじゃ、帰るぞ」
『あっあの、仕事終わったんでこれで』
「待っ…」
「あれぇ〜?将軍様じゃないですか。すいませんがこいつ帰るんで。では」
『さようなら!』

「(なんであんなとこに将軍いんだよ!!)」





俺は気付かなかった。
帰って行く俺達の姿を後ろから睨み付ける将軍に。
この時将軍の、今までとはまるで違う鬼の様な顔に、異常な程の執着心に気付いていれば…華を守れていたかも。そう思うと悔しかった
まったく、知らないという事は恐ろしい





「……絶対に、手に入れてみせる…。」















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