世界の平和は甘い物を食べる事から始まるのだ 夢から覚めるとそこはいつもの幸せな生活じゃなくて 夢を見た。 お団子食べて、銀ちゃんがこぼして、新八がふいてあげて、さっちゃんさんが怒って、神楽ちゃんがたくさん食べちゃうと、お登勢さんとキャサリンさんが怒っちゃって。 それからお妙さんが来ると近藤さんもついて来て、土方さんがため息つくと沖田くんが馬鹿にして喧嘩が始まるの。 そんな、何気ない日常の幸せな夢。 『ん………』 目が覚めると頭がクラクラした。なにがあったのか、よく思い出せないが、この頭の痛みからすると薬かなにかだろう。 重たい目を開き辺りを見渡すと、そこは畳が敷かれた小綺麗な部屋だった。いや、和室と言ったらいいのか。 どちらにせよ、見知らぬ場所に間違いはなかった 『どこ…』 「目覚められたか」 『っ!!』 いつの間にか目の前には将軍様。 なんだか今までとは違い鬼の様な顔をしている 「余はもう待てぬ。主と婚約する事に決めたのだ」 『無理ですって何度も言ってるじゃないですか!!!』 私は肩に手を置いた将軍様を、思い切り突き飛ばしてしまった 「……ならば、力づくでも余の物にするまでだ」 そういうと将軍様は私を押し倒した。 さっきとは違って、撥ね除けようとしてもびくともしない、ものすごい力だった。 将軍様は私の両手を上にあげ沖田くんに貰ったリボンでキツく縛った。 …違う。このリボンはこんな事のタメに使うのじゃないのに 泣きそうになると、将軍様が私の服を引き裂いた 『………っ』 ここまできたらいくら馬鹿な私でもわかった。力づくとは、こういう事か。 それよりも私は服が破れた事がショックだった。この服は、お母さんの最後の形見だったのに。 私は怒りに任せて将軍様のお腹を思い切り蹴った。 打ち首になるかもって思ったけど、女を捨てるのだって同じ様なものだ 「…おのれ小娘がァ!!!」 そう私に言い放った将軍様の顔は、もはや人間とは言えなかった 鬼の様ではない。鬼そのものだった そしてそのまま私は唇を奪われた。苦しい。気持ち悪い。嫌だ。イヤダ 私は不自由になった自分の手を恨んだ。その時ふと思い出した、腕輪の存在。最後の頼みで私は3つ目のボタンを押した ***** 「本当にここであってんのか?」 「間違いないぞ!ここが将軍様のお屋敷だ」 「……つかなんでいつものメンバー!?!?」 華を探しに来た俺たちだったが、集まったのは万事屋と、近藤土方沖田の3人だった。 なにか連絡があった時の為にお妙が万事屋で待っててくれるらしいから、とりあえず今誘拐の事実を知っているのはこの7人だけだ そして現在徳川家の屋敷前。 「華ー」 「華ーでてきなせェー」 「いや、出てくる訳ないでしょう」 「酢昆布あげるヨー」 「くる訳ねぇって」 「っ!」 銀ちゃん、と華の声が聞こえた気がしたが幻聴だったらしい。 いつの間にか華が大きい存在になっていた事に改めて気付かされた。それは他の奴等も同じらしい。 「とりあえず入ってみるネ!」 「な!ちょ待って!」 「何者だ!!」 そんな事を考えている内に神楽がどでかい門を開けてしまったらしい。 当然俺らは見つかったわけで、顔を覚えられてしまった。 ずる賢い沖田と素早い土方はとっさに壁に隠れたが。 「………どうすっかなぁ…」 「僕いいこと思い付きました!」 新八がアイデアを生み出したらしく、みんなでそれを聞いてみた 「………一か八か、やってみっか」 ***** 『はあっ…はぁっ…』 間一髪だった。唇は奪われたが、まだ、本当に危ない所まではいかなかった。だが次見つかったら…なにをされるか怖くてしょうがなかった。 私は口でリボンの端を引っ張りほどいた。 3つ目のボタンは、瞬間移動だったらしい。 このまま外に逃げられないかともう一度押してみたが反応しなかった。一日一回が限度なのか?まだまだこの腕輪の力はわからない。 どう逃げようか壁伝いに歩きながら考えていると、なにやら声が聞こえた。 「華ー」 銀ちゃんだ!他にも沖田くんや神楽ちゃんの声もした。 嬉しくなって私は思わず声を出してしまった 『銀ちゃ…くっ……』 その瞬間後ろから何者かに頭を殴られた。きっと将軍様の御付きの者か誰かだろう。 よろけながら逃げると、前から違う誰かに腹を殴られた。 覚悟はしていたけどやっぱり痛い。 また、逆戻り…か… ***** 目を覚ますと体中が痛かった。やっぱり殴られたのはキツい。痣が出来てたりしないかお腹を見ようとしたら、両手が動かず、頭の上で手錠で固定されていた。腕輪も使えない様に布でぐるぐる巻きにされている。立ち上がろうとしたが足までもが鎖でつながれていた。 ふと気がつけば服も変わっている。 真っ赤な着物。まるで血の様な… 周りを見ると、さっきとは違う場所の様だった 一面真っ白で、頭がおかしくなりそうだ。 足元に敷いてある布団と逃げられない状況に思わず口元が引きつる。 するとそこに将軍様が現われた 「おかえり、姫。」 『なにが姫よ。ふざけないで』 私は近付いてきた将軍様に頭突きをした。 すると将軍様は痛い素振りも見せず私に笑いかけた そして私の髪を手で梳かした 「髪が乱れておるぞ。邪魔であろう」 『やだっ…』 そういうと髪を頭の上に引き上げ、私が握り締めていた総悟くんから貰ったリボンで縛った そしてうなじに口付けをした 『ぎゃっ!!!』 「…お前はもう気付いているのだろう?私の正体に。」 『鬼…ですよね?将軍様に取り付いた』 「この男がお前を欲しがっていたから手を貸してやっただけのこと。ちょうど私もお前が欲しかったのだ」 『なんで私なの!?』 「お前が持っている力が欲しい。私との子が産まれればその子は膨大な力を手にしているだろう」 『産めってか!!子作りさせろと!?!?』 「物分かりがいいな。」 『むーりーーー!!!』 それなら、と将軍様…に取り付いた鬼は言った 「実行するまで」 そう言って鬼は私の着物を引っ張りはだけさせた。着ていたはずの下着はなく、恐らく着替えた時にでも取られたのだろう。 こんな冷静なのが自分でも不思議だ。 でもこれはきっとみんなが助けに来てくれるって信じてるから。みんなを、信じてるから。 強く見返すと、鬼の顔はみるみる内に怒りに変わった。 「…なぜだ、なぜそんな目で見る!!」 『私は、みんなを信じてるから、大丈夫。あんたなんかに負けたりしない』 「ばかだな…子供を作ってしまえばこっちのも…」 『そしたらお腹の子と一緒に死ねばいい。』 「……ふざけるな!!」 そういうと鬼は何発も私を殴った。 そして気を失うか失わないかのギリギリの所で私に聞いた 「これでも結婚しないか?」 『……し……ない』 「お前の仲間がどうなったとしても?」 『…え?』 「まずはあのデカい犬からやってもいいかな。それから家を爆破。最後に全員不慮の事故で死亡…」 『…それだけはっ!それ、だけは、勘弁して』 「お前が一度うなずけば奴等の命は保証しよう。たった一度、うなずけばいいのだ」 何回考えても答えはひとつだった。 …みんなを護りたい。いつも守って貰って、迷惑かけてばっかりの私が最後にできること。 結婚なんて死ぬ程したくないけど、これでみんなの身の安全が保証されるなら。 私は覚悟を決めた。 『わかった』 「ちゃんと言え」 『………私…結婚します』 もう後には引けない。 今度は私がみんなを護ってみせる。 …でもやっぱり出来れば助けに来てーっっ! (華待っててくだせェ)(今から行くからな) - [*前へ][次へ#] |