◆短編
疼く熱、熟れた息1※R18
穴の底、鬼の住処の続きになります。
身体の底から燻るような熱が消えない。
ジクジクと傷口のように疼くそれは俺の身を焦がし、浅ましく蜜を垂らしながら勃ちあがる肉茎は、赤く色付いていた。
ちゅくちゅくと滑った音をさせながら扱きあげ、全体に塗すように先走りを絡めた肉茎は、なおも強い刺激を欲して揺れる。
「んぉ……お、ぉ」
硬く尖った胸の突起を指で摘み軽く引くと、快楽で舌先が戦慄いた。
何処を触っても気持ちよくて、何処を弄っても感じてしまう淫蕩な身体。
それなのに俺は達する事が出来ずにいた。
「う……ぁ、あぁ……」
ひくひくと呼吸をするように蠢くのは、排泄にしか遣われない筈の尻穴。
本来なら触れる事すら躊躇うそこは、誘うようにヒクつき強請る。
「ふぁ……」
先走りで濡れた指を息を吐きながら、ゆっくりと中指を埋めていく。
痛みはない。
それどころか気持ちがいい、それも、すごく。
「あっ……ぁあ、アァ……」
内壁を指の腹で刺激しながら奥深くまで沈めると、鉤の形に指を曲げ、ぽてりと膨らんだ気持ちのいい場所をコリコリと掻き刺激していく。
「んひっ、ひ……ぃ、いぁあ…ぁ」
唇から零れた声は明らかに嬌声で、その証拠のように硬く張り詰めた肉茎の先からは、ねっとりと濃い蜜が糸を引いて零れた。
俺は尻穴での自慰で感じている。
「んあ゛ぁあ……っ!!!」
ぶるりと震えた身体につられ不規則に動いた指が思わぬ所を引っ掻いて、不意打ちの快楽で全身がびくりと揺れた。
がくがくと揺れる身体に合わせて肉茎も上下し、扱きあげていた手を白く汚しながら激しく射精する。
「ぁ……あ、あ…ぅあ……」
魂が抜けてしまう程の悦楽は長く続き、肉茎の穴を擽る性の放出は俺の身体を甘く刺激した。
恥ずかしいくらい大量の精液はじっとりと床を濡らし、萎えた肉茎からはもう一滴も性は出る気配はない。
それなのに俺の身体はなおも疼く。
じくじくと精神を追詰めていく熱。
白く濡れた指を本当に欲しい男の性器だと思いこみ、口に含みクチュリとしゃぶった。
「んく…、んッ、んぅ……、ぷ…」
唾液を絡めた舌を指の節に這わせ、指を蠢かし上顎を擽る。
口を滑る指がちゅぷちゅぷと淫らな水音を立てるのに耳を犯され、なおも熱く昂ぶる身体。
「アァ、―……ぁ、あぁ、あ……」
火照った身体を癒す術はわかっているが、いやらしい行為を強請れずに、俺は今日も自身の指で身体を抉った。
「少し顔色が悪いな、寝不足か?」
「えっ?!」
ぼんやりしていた俺の額に鬼の大きな手の平がふわりと触れ、俺は思わず身を硬くする。
いつの間に触れあうほど近い距離に来たのかも気付かなかった。
「熱はないみたいだがなぁ……、身体はきつくないか?」
「な、何ともない、少しぼんやりしていただけだ」
慌てて手を振り不調を否定すると、鬼は安心したように息を吐き、強面の顔をくしゃりと歪めて笑う。
怖い顔の筈なのに、彼の笑顔は可愛い。
「そうなのか? 無理はせんでおいてくれな?」
ポンポンと頭を2度、鞠をつくように柔らかく叩かれて、俺の心が何度も弾む。
心臓の音がどきりどきりと喧しく耳に響く。
「心配かけてすまないな」
「なんの、こうやって誰かの心配をするのも俺には楽しいものだ。具合が悪くないのならそれに越した事はないがな」
優しい鬼の言葉に俺の心はツキリと痛む。
まさか鬼の事を思って疼く身体を慰めるために、夜毎自慰に更けていて寝不足だなどとは言えない。
しかも自慰の時に鬼の肉茎を思って致しているなどとは口が裂けても言えぬ。
「……すまん」
再度謝った俺に『気にしてくれるな』と言ってくれる鬼に俺は、違う意味で謝ったのだとは言えなかった。
「これは雑草か?」
「いや、それは育ちかけの野菜の苗だ。もう一月程経てばぐんと伸びてくる」
鬼に聞きながら草むしりを手伝う。
鬼の手で作られた畑には今まで見た事が無い野菜が沢山植えられていて、世話をしながら鬼にどういう野菜なのか聞くのが最近の楽しみになっていた。
俺は猟師で多少は野菜も作っていたものの、大半は物々交換で野菜を手に入れていたから、あまり種類を知らず、そして鬼の畑の野菜は豊富。
しばらくは種類を覚えるのだけでも楽しめそうだ。
狩る側だった俺が作る側に回るなんて、予想もしていなかった人生だが、悪くない。
むしろこうやって土に触れて大地の恵みを得て生活するのは、俺をとても穏やかな気持ちにさせてくれる。
「そろそろ飯にせんか? ついでに夕飯のおかずに魚を釣ろう」
「いいな、今夜は魚料理か」
鬼の料理はどれも美味いが、その中でも魚の煮つけは絶品で、卑しくも口の中にヨダレがじゅるりと溜まる。
「釣れなかったら今日の夕飯は寂しいぞ」
食いはぐれるわけにはいかない、人生の損だ。
これはなんとしても釣らなくては。
「それは困る、早く行こう」
急かすように先導する俺を、鬼がはははと笑う。
だって本当に美味いのだから仕方がない。
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