散雪華〜貴方と共に〜 それでも 千鶴ちゃんのおかげで広間で食事を取るようになってくれた山南さんだったけれど、やっぱり以前とは変わってしまった。 「山南さん、変わっちまったよな。」 「前から黒くて怖い人だったけど、最近は人とも話さなくなってますます怖くなったわね。」 「だよなー。 あの人、剣を振れない自分が許せないんじゃねえかな? 」 「それはあると思うわ。」 「えぇっと、二人ともすごく怖い話ししてない? なんか山南さんが鬼、みたいな…」 「鬼か……。 まあそんなとこあるよな。 土方さんより山南さんの説教の方が長くてめんどくせ 「私の説教がなんですか? 藤堂くん」 「げっ! 山南さん!!いつからそこにいたんだよ!?」 「今しがた通りかかったまでです。私の名前が聞こえたものですから」 聞かれていたな、と直感で思った。 「平助が勝手に言ったことですから私達は知りませんよ。 ねえ、千鶴ちゃん?」 「え、!?」 「お、おい! 一葉! それはねえだろ!?」 「ですからお説教なら平助が聞きたいそうですので。」 そう言い、千鶴ちゃんの手を引いて足早にその場を去った。 「あ、あの…一葉さん。 平助くんを置いてきて大丈夫だったんですか?」 「大丈夫よ。それにあの場合、いつまでも千鶴ちゃんがあの場にいたらますます山南さんの癇に障ってしまうと思ったし。平助には悪いけど、囮って事で」 「あ、あはは…。 でも、一葉さんにも案外やりますね。 もっと、なんていうか……」 「卑怯?」 「いえ! そんな事はありませんけど、でも意外でした。」 「あら、生きて行く上でちょっと小賢しい手を使うことなんて結構あるわよ? 危険だと思ったらまずは自分の身を守らなきゃ、違う?」 生きて行く中で危険は付き物。 それはどの世界でも変わらない。 だから身を守るために新選組は剣を振るうのだ。 そして、それでも山南さんのように不覚を追ってしまう事も、さらには命を落とす事もある。 [*前頁] [戻る] |