散雪華〜貴方と共に〜
勢ぞろい
とは言うものの、千鶴ちゃんの提案はとても良いもので、山南さんには特別に別の膳が用意された。
「千鶴ちゃんが持って行くといいわ。 私も一緒に行くから」
「はい!」
彼が手を付けてくれるか、はたまた嘗められたと追い返されるか。
そんな相対する気持ちで私たちは山南さんの部屋に向かった。
「山南さん、雪村です。 お食事をお持ちしました。入ってもよろしいでしょうか?」
「ええ。 どうぞ」
すっと襖を開けると、今まで研究をしていたのか、机に向かったままの山南さんがいた。
穏やかだった山南さんだが、私たちが運んで来た膳を見ると、眉をしかめた。
「これは?」
「千鶴ちゃんが考えたんです。」
「お箸を使わなくても食べれるようにおにぎりにしてみました。 お味噌汁の具材は細かく切ってあります。 皆、山南さんのことを心配しています。 少しでもいいので召し上がってください。」
お願いします。と頭を下げる千鶴ちゃんの必死な姿に、私も釣られて頭を下げた。
「私からもお願いしますね、山南さん。 食べなければ傷も治りませんし…。」
それでも山南さんからの答えはなく、私たちは仕方なく部屋を後にした。
「山南さん、召し上がってくれるでしょうか?」
「私たちにできる事はあそこまで。 あとは山南さん自身に任せるしか…」
そう答えるも私も不安があった。
自分と言うものをしっかり持っている山南さんだ。私たちにお願いされたからと言って心を開いてくれるかどうかは分からない。
「お食事は置いてきました。 山南さんが食べてくださるか…」
広間に戻り、私たちも食事につく。
けれど、山南さんが一緒に食べなくなってからというもの、他の皆の気持ちも暗くなってしまっていて広間には食器の音だけが響いている。
「大丈夫だ。 山南さんはきっと食べてくれる。だから、そんな顔するな。」
「はい…」
千鶴ちゃんは、原田さんに励まされても気落ちした返事しかできなくて、部屋の雰囲気はますます暗くなるばかりだった。
カタン……
(ん?)
「私もこちらで食べさせていただきます。 食事は皆で食べた方が美味しいそうですし。」
「「山南さん!」」
「ああ。食事は大勢でした方が美味いに決まってる!」
「山南さん、座布団を。」
「良かったな。千鶴。」
「はい!」
久々に全員そろった食事はいつも以上に盛り上がり、最近おかずの取り合いをしていなかった平助と永倉さんは土方さんに怒られるまでひたすら騒いでいた。
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