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散雪華〜貴方と共に〜
鬼の決意

例の薬の管理者である新見さんが、山南さんに黙って薬の実験を強行するようになった。

それも、山南さんが改良したものよりもさらに質のよい薬を何処からか手に入れ、それを捕縛した人間に与えては、薬への耐久を調べているという、とても悪質なものだった。


「あれはきっと、綱道さんからもらってきてるんだろ。あの人、本当に腹の底では何考えてるかわからない人だからなあ。」

「綱道さん…?」


聞きなれない名前に私は首を傾げた。


「あれ?聞いてなかったっけ? 幕府から薬の研究を依頼された時に、蘭方医として、雪村綱道って人が来たんだよ。」

「雪村、綱道…」

「ああ。だけどあの人、腹の中では何考えてるかわかんねえからさ。」


その人の所に新見さんが出入りをしている。


けど、何で新見さんはそんなにまでこの薬にこだわるのだろう? そして、綱道という人も。

この薬は危険すぎるのに…





「新見さんを薬の研究から外す?」

「ああ。あの人は芹沢の名前を盾に取って好き勝手やりすぎだ。 これ以上あの薬に関わらせたらまた何を仕出かすか分からねえ。」

「けど、そんなすんなり行くかなあ?隊規違反でもないでしょ?」

「いや、新見は芹沢の名前を使って商家から金を取り、島原で使っている。 “勝手に金策すべくからず”。立派に当てはまってんじゃねえか。」

「でもよ、土方さん。それじゃあ、は隊規違反じゃねえか。 薬の研究から外すどころじゃなくて切腹ものだぜ?」

「上等じゃねえか。 局長、副長は試衛館派だけでいい。」


そう言った時の土方さんの顔が余りにも曇りがなくて、私たちはもう口を紡ぐしかなかった。




「一葉、俺の判断は間違っちゃいねえよな?」

「え?」

その夜、お茶を運んだ私に向かって珍しく弱々しい言葉がかけられた。


「俺は、この新選組という組織を強くするために鬼になる。 新選組の前に立ちはだかるものは、例えかつての仲間であろうとそれを礎として這い上がろう。 そう決めた。だから、新見がこれ以上勝手な真似をする様なら、俺はあいつを斬る。」


「…間違っているなんて私が言えるはずないじゃないですか。 でも、無理をし過ぎないで下さい。」

「ああ。 俺はきっと、近藤さんの名前を世に轟かせてやる。」



そう言った彼の目には、もはや先ほどの弱々しさはなく、昼間私達に言葉を放った時の、あの曇りのない目だった。



後日、新見さんはまた新たに勝手に羅刹を作り、その咎を受けて島原にいる所を沖田さんによって斬られ、名目上、隊規違反で切腹ということになった。



芹沢派の幹部を一人消したことで近藤派の発言力は随分と増した。
さらに、会津藩からの信任も増し、やっと組織として軌道に乗った。様に見えた…



ただ、もう一人新見さんよりももっと問題を起こしかねない人がいた事を、私たちは忘れてはならなかったのだ。





はい。M-izthoです。 えっと…ここの部分、アニメでは恐らく違った展開だったと思いますが、史実に則った方がしっくり来たので、大人しく新見さんには死んで頂きました笑

新見さんは、芹沢さんの名前で、何百両というお金を借りていたそうです。 そしてそのお金で島原に行っている時、近藤局長の名前で屯所に呼ばれた所応じずにその場で隊規違反も咎められ、口封じとして沖田さんを斬ろうとした所、逆に斬られたとか何とか…。

人に頼って、その影で悪さをしていたのが、こうして彼の死に繋がってしまったんですね…。


次は、いよいよ名実ともに近藤派による新選組の誕生の場面へと話しが大きく展開していきます。 精一杯、近藤、土方の苦難と決意を記していきたいと思いますので、これからもよろしくお願いいたします!


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あきゅろす。
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