「つか質問に答えろよ」 微妙な沈黙が数秒流れたリビング。 マジになったヨウが、おれに質問への答えを要求してきた。 「つか……なんで?」 「質問に質問返すな」 質問却下かよ。 聞かせろよ、けち。 「……あー…どうだろ、家賃来月分払っちまったし、荷物整理とか色々あるし……何にせよ、2ヶ月は無理、だな」 「2ヶ月か……長ぇな」 ふう、と息をつくヨウ。あの、意味わかんねーんですけど? そんな思いを込めてヨウを見ると、にっ、とヨウは笑った。 (……ほんとに昔っからおれは、こいつのこの笑顔に弱い) 「練習場の最寄り駅の近くにマンション借りたんだよ。こっからじゃ、遠すぎっから」 「……は?」 ヨウは今、プロバスケチームに所属している。 そのチームの練習場は、この田舎から3時間、おれの使ってるスタジオの最寄り駅のさらに少し先の駅の近くだ。 ……………え。 「……1ヶ月で準備済ませよ、俺を2LDKに一人で2ヶ月も待たせんな」 水、と乱暴に立ち上がって冷蔵庫へ向かうヨウ。 慣れねえことしたって顔してる。 言われた言葉とヨウの表情に、少し遅れて胸がいっぱいになって。 思わず熱く火照る顔もそのままにヨウを追いかけて、抱き締めた。 「っちょ、てめ」 「嬉しい。すげー嬉しい。なんで? っあーもー、好きすぎんだけどなんなのお前」 ぎゅうぎゅう、抱き締めた。 おればっか、なのかと思ってた。 おればっか、お前のこと、こんな好きで……。 なのに。 「……お前は俺ともっと一緒にいてえんだろ」 不遜な態度。余裕な笑み。 それに対して、いつもより優しい声。 「だから、ずっと一緒にいてやることにしたんだよ」 ぐしゃ、と乱暴に同じ高さのおれの頭を撫でるヨウ。 愛しくて嬉しくて、思わず涙が出た。 「……ばーか。何泣いてんだよ?」 「……うれし、くて」 「ふはっ。そりゃあいい」 また向日葵みたいに、ヨウは笑った。 そして嬉し泣きしながら笑うおれに、一つ、キスをくれた。 「……四年間、ありがとうな」 もう、向日葵の季節は終わったけど。 多分これから先、おれの隣から、向日葵が消えることはない。 ←短編小説へ → [戻る] |