部誌提出作
ある魔物達D
・少しだけ魔王
「アタシの事殺してくんない?」
長らく出掛けていたウィッチは帰って来るなり私にそんな事を言った。
「……何を馬鹿な事を言っている」
「フフ、確かに。アタシは死ねないからねぇ」
「死ねない?」
首を傾げて聞き返す。ウィッチが死ねないなんて三百年友人をやっていて初めて聞いた。
「私はバグなのさ」
バグとは何だ、という私の問いにその時ウィッチは答えてくれなかった。
今は、分かる。
ウィッチの記憶が、バグが、勇者の剣を通じて伝わってくる。
「な、んで……」
ウィッチが驚いた顔をしている。
「私も驚いた」
バグを消せる奴が居るなんて。
ウィッチ。私は面と向かって言った事は無かったけれど――ウィッチの幸せも願っていたんだよ。
死ぬ事がウィッチの幸せだというのなら、私は喜んでそれに付き合おう。
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