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ルパンの恋人U
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気分直しにゲームをしていると、やっと、ママンが帰ってきた。とっつぁんと違い鍵を持っていない俺は、戸締りできない家に、眠った親友を一人残して去れなかった。俺もルパンに甘い、結局のところ。

「あ、おかえりっす。おばさん、いつもきれいですね」

俺はすぐさま立ち上がって、ママンからスーパーの袋を奪って、ダイニングテーブルまで運んだ。もちろん、下心のなせる技。

ママンは、ぎゃはは、と声を立てて笑った。ほっぺにえくぼを作るところが、かわいらしい。

「何、言ってやがんだよ、こんな顎の割れたババアに」

ママンは、いまだにレディースでアタマ張ってた頃の口調が抜けない。そんなところも、すごくタイプだ。

「いや、すげえ、可愛いです。ゴリラなところが、特に」

あ、ゴリラは、ミスった。口が滑った。チャーミングって意味なんだけど、通じるかな。

同じ年の息子がいるのに、ママンはチョココロネよりも、かなり若い。30代にしか見えない。俺には、熟し加減のちょうどいいメスゴリラだ。ルパンとは似ていなくて、一緒に歩いていると、女子プロレスラーと新人マネージャーだ。

授業参観では、チョココロネとママンは、いつもすごく目立ってた。ホント、変な母親を持って互いに大変だったよね、俺たち。

「これ、食うか?」

バナナを一本わけてくれるところが、何とも自分のキャラをわきまえている。ホント、ゴリラの物真似、上手いよね。

「夕飯、お前も食ってくか?」

エプロンを巻いて流しに向かう。メスゴリラのフェロモンはたまらない。思わず、その背中に抱きつきたくなる。あ、俺、失恋のせいで、随分、いろいろ溜まってるのかな。下半身辺りに。

ルパンは、ママンと全く似ていないが、フェロモンは似てる。甘やかなのに、ちょっぴり寂しくて切なくなるフェロモン。

「さっき、ルパンと食いました」

「何だ、そうかい」

息子が夕飯をすませていると知って、途端に手を休めるママン。自分だけなら、余りもので済ませるらしい。二十歳を超えても、息子は息子なんだよね。俺も、チョココロネを思い出す。そろそろ帰らないと、あの人、レクイエムを歌い出す。

「じゃ、茶、入れてやるな。あれ、あいつは?」

「部屋で寝てます」

失神させられてます、なんて、さすがに言えない。

「ルパン、恋人出来たんですね」

もうママンも公認の仲なのだろうが、口に出して言ってみた。俺、今日は、ママンに、腹イセするつもりなのかな。いくら、ママンが心広くっても、息子の恋人にケチつけたら、怒るよね。

「知ってるぜ。いい男だよね」

やっぱ、了承済みか。俺が、がっくりしてると、ママンは、何を察したのか、ニヤニヤして肩をド突いてきた。うわ、今、肩砕けるかと思った。
                                
「何?ヤッチンてば、男と男は恋愛しちゃ駄目、とか思ってんのかよ。それとも、あいつを恋人に取られたとでも思ってやがんのか?」

笑ったママンは、えくぼが何とも、かわいらしい。ああ、ママン、もっといじめて。俺、ママンにいじめられたら、失恋の痛手も、親友を改造された痛手も、忘れられそうな気がする。

「小さいころからのダチっすからね。いろいろ心配っつうか」

何しろ、毎回、失神だからね。体とか、大丈夫かな、とか、いろいろ、さ。



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あきゅろす。
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