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ルパンの恋人
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親友んちの炬燵に寝ころ込んで、漫画を読みふけりながら、飯が出来上がるのを待っている俺は、かなり図々しい。

でもね、金持ちで頭も顔も性格もいい俺は、何をしても許されるから大丈夫。

プール付きの俺の家よりも、木造アパートのこいつの家の方が、落ち着くって、何でかな。こいつのママンが俺の好みだからかな。ごつい眉に逞しい肩、デカくてゴリラな女って、何かソソるよね。

ママンが、ハエを空手チョップで真っ二つにしたときの、俺の胸の高まりはなんだったのだろう。まさか、超奥手の親友には訊けない。

働くシングルマザーに育てられた親友は、腹減ったと言えば、飯くらいお茶の子さいさいで作ってくれる。あ、ママン、そういえば、ずっと独身だよね。何時に帰ってくるんだろう。恋人とかいるのかな。

「お前も箸ぐらい出せ」

親友が、フライパンを片手に告げてくる。

あ、生姜焼きだ。きゃっほい、うまそう。

「よしきた、ルパン」

「だから、その呼び方、やめろって」

ひょんなキッカケから、再び口にするようになった昔のあだ名に、嫌そうな顔をするものの、怒りはしない。

小学生の時からのツレであるルパンは、いつも、俺に甘いのだ。大抵のことには、平気な顔で付きあってくれる。

合コンにも、面倒臭がりながらもついてくるし、頼めば女の子のアドレスも聞き出してくれる。テニスに誘えば、少々体調が悪くても、本気で相手をしてくれる。

今日だって、ぶらりと寄っても、嫌な顔せずに、家に入れてくれた。

さては、こいつめ、俺に惚れてるな。

ルパンは、頭も切れるし、運動も出来る。センスもいい。顔だって悪くない。だが、地味で目立たず、大人しい奴だ。

高校までずっと一緒だったが、今は、俺はチャラい私大に、こいつは、地味な国立大学に通ってる。

俺は、金持ちで顔も頭も性格もいいから、いつでもどこでも話題の中心にいるが、こいつは、話題の端っこどころか、名前すら覚えられてないことが多い。

俺は、モテるが、こいつは、モテない。たまにコアなモテ方をするが、なぜか、相手の女の子は、片想いのまま諦める。こいつを熱い想いで眺めてたら、バリヤーを張っているのに気付くからだ。

誰とでも打ち解けるが、決して内面を見せない。何を考えているのかわからないが、頼れば、意外にも、何でも解決してくれる。

全然違うタイプの俺が、ルパンからずっと離れないのは、単に小学生のときからの腐れ縁だからじゃない。俺がこいつに甘えているからなんだよね。

俺は、知ってる。ルパンは、ただ者じゃない。

小学校からの付き合いだ。さすがに、わかる。

能ある鷹は爪を貸金庫に預ける、っていうだろ?こいつの正体は、ただの地味男じゃない。

地味を装うワルなのだ。

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あきゅろす。
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